◇SH0654◇タイ:タイにおける投資ファンド・ベンチャーキャピタル税制(新たな税務恩典の導入) 箕輪俊介(2016/05/11)

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タイ:タイにおける投資ファンド・ベンチャーキャピタル税制
(新たな税務恩典の導入)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 箕 輪 俊 介

 

 本年2月、タイにおいて投資ビークルに対する新たな税務恩典が導入された。この税務恩典は、特定の事業(以下、「育成対象事業」という。)への投資によって得た収益(配当収入及びキャピタルゲイン)について所得税の免税を認めるものである。但し、この税務恩典を享受するためには一定の要件を充たす必要があり、税務恩典を享受できる主体も限られている(詳細は後述する。)。

 今回は、この税務恩典のポイントについて触れつつ、この税務恩典の利用を検討する場合に問題となり得る事項について以下で触れていきたい。

 

(1) 恩典を受けるための条件

 恩典を受けるためには、当該投資を行う者が「ベンチャーキャピタル会社」か、「ベンチャーキャピタルトラスト」(以下、総称して、「本投資ビークル」という。)である必要がある。

 ここで、ベンチャーキャピタル会社とは、タイ法に準拠して設立された会社であり、払込資本が2,000万バーツ以上であること、SETにベンチャーキャピタル事業の登録の申請していること(許可制ではなく届出制、内容もそれほど難しいものではない)等の要件を充たしたものをいう。

 ベンチャーキャピタルトラストとは、The Trust for Transactions in Capital Market Act, B.E. 2550 (2007)に基づき設立された信託であり、ベンチャーキャピタル会社と同様に信託財産が2,000万バーツ以上であること等の要件を充たしたものをいう。

 

(2) 恩典の内容

 上記条件を充たす場合、育成対象事業に従事するタイの非上場会社に対する投資に関しては、(1)投資先の会社から受け取る配当金収入(育成対象事業から生じた利益からの配当に限る)が非課税となり、(2)投資先の会社の株式の譲渡益も原則として非課税となる。但し、(2)のキャピタルゲインに関する課税免除については、投資先の会社の事業が育成対象事業を中心としていること(株式売却がなされた(キャピタルゲインが発生した)事業年度の前事業年度の所得の80%以上が育成対象事業によって生じた所得により構成されていること)という要件が課されている。

 また、本投資ビークルへの投資も恩典の対象となる。すなわち、本投資ビークルへ投資する者の所得税において、本投資ビークルから受け取った配当金収入や残余財産処分に係る分配金は非課税となり、ベンチャーキャピタル会社の株式やベンチャーキャピタルトラストの受益権を売却したことにより得た譲渡益も原則として非課税となる。但し、いずれの収益も育成対象事業への投資に関連したものであること等、かかる恩典を享受するための一定の条件が設定されている。

 

(3) 恩典の対象となる特定の投資先

 非常に幅広い範囲の事業が育成対象事業として指定されている。具体的には、(1)食物及び農産物産業、(2)省エネルギー産業、代替エネルギー産業及びクリーンエネルギー産業、(3)バイオテクロノジー産業、(4)医療及び健康産業、(5)観光産業、サービス産業、クリエイティブ・エコノミー産業、(6)新開発資材産業、(7)繊維、衣料及びそれらの部品産業、(8)自動車及び自動車部品産業、(9)電子、コンピューター、ソフトウェア及びIT産業、(10)研究開発、技術革新産業及び新産業が挙げられている。

 タイの日系社会おいて裾野が広く発展している自動車産業及び自動車部品産業をはじめとして、近年日系企業の関心の高い、医療やバイオエネルギー、省エネルギー産業、IT産業といったものも対象として指定されている。また、「サービス産業」や「新産業」といった捕捉範囲が非常に広いように見受けられる業種も含まれている。

 

(4) かかる恩典の適用期間

 ベンチャーキャピタル事業の申請をしたときから10会計年度とされている。

 

(5) まとめ・留意すべき点

 本恩典は、恩典を利用するための要件もそれほど厳しいものではなく、恩典の対象となる育成対象事業も幅広く認められているため、実務的に取り得るオプションになるものといえよう。但し、未だ施行されたばかりの制度であるため、実務的運用がどのようになされるのか、その動向を注視する必要がある。

 なお、タイにおける投資にて避けては通れない制度・規制として、外国人事業法等に基づく外資規制がある。かかる外資規制の適用が本制度の利用によって免除されるわけではない。したがって、外資マジョリティの本投資ビークルが外資規制の対象業務に従事する会社に投資する場合には、外資規制に留意する必要がある。

 

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