◇SH3576◇経産省、中小企業向けに「AI導入ガイドブック」「外部AI人材との協働事例集」を取りまとめ――ガイドブックは需要予測・外観検査の2領域から、協働事例集では6事例の具体的成果を紹介 (2021/04/14)

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経産省、中小企業向けに「AI導入ガイドブック」
「外部AI人材との協働事例集」を取りまとめ

――ガイドブックは需要予測・外観検査の2領域から、協働事例集では6事例の具体的成果を紹介――

 

 経済産業省は3月31日、中小企業がAIを導入する2パターンのそれぞれの場合に参考となる資料を取りまとめ、(A)中小企業向けAI導入ガイドブック、(B)中小企業と外部AI人材の協働事例集と名付けて公表した。(A)は中小企業が自らAIを導入する場合、(B)は「中小企業自身だけでは難しく、AI実装の知見を持つ外部人材と協働して導入を進める場合」のための資料となる(順に以下「AI導入ガイドブック」「協働事例集」という)。

 AI導入ガイドブックはリソースに限りのある中小企業でも効果が見込める導入ノウハウを体系化したもので、経産省によると「AIに関する専門知識なしでも分かるような形にすることで、中小企業主体の導入を目指す」とともに「社会実装のインパクトが大きなAI導入領域においてガイドブックを作成することで、類似の課題を抱える中小企業が広く同一のガイドブックを活用できることを期待」する。AI活用ニーズが高く、優先的に導入が必要と考えられた(a)需要予測:小売業、卸業における売上や天気等のデータを活用した分析等、(b)外観検査:製造業の検品工程における画像認識の技術を用いた効率化等といった2つの領域をテーマとし、現時点では次のガイドブックが公開されている。(1)AI導入ガイドブック 需要予測(小売り、卸業)、(2)AI導入ガイドブック 外観検査(部品、良品のみ)、(3)AI導入ガイドブック 外観検査(部品、不良品あり)。

 具体的な対象者は各ガイドブックごとに設定されている。たとえば、上記(1)は「小売り・卸業で、売上・点数予測や在庫管理業務にお困り」の方向けとされ、「会社を良くするために、新技術の導入をしてみたいと思っている」「パソコンの基本操作ができる」の2つの条件に当てはまる場合に特に「お勧め」とされる。表紙を含めて全48ページ建てとなるその内容は(I)始めに:本ガイドブックで紹介するAIの機能・効果概要と導入事例の概要、(II)導入工程:導入工程全体像、企画、モデル構築、導入・運用、(III)相談窓口・利用可能な支援策――という構成となっている。

 これらのうち(II)をみると、導入工程は(A)企画、(B)モデル構築、(C)導入・運用の3段階に整理され、さらに(A)は①導入範囲決定、②導入費用見積の2工程に分けられる。①の決定では、まず「改善点を把握」することが必要であり、「需要計画について改善したい点を正しく把握し、 AI導入の必要性があることを確認」すべきことを指摘。続く「対象範囲の決定」に関して「発注工程再設計における人とAIの協働の考え方」「AIを活用して予測を行う対象商品の優先順位づけを行い、選定」「需要予測AIを活用してどの期間の需要を予測し、業務にどう活用するか設計」「需要予測による効果測定のための指標を設定」といった具体的な考え方・設計例が留意点とともに紹介されている。

 上記(B)の協働事例集は複数の都府県の中小企業6社、経産省が2020年度に実施した「AI人材連携による中小企業課題解決促進事業」で育成された人材・各社5名程度が昨年12月中旬から本年にかけての約2か月間、オンラインで協働プロジェクトを実施し、課題に取り組んだ成果を事例集として取りまとめたもの。

 プロジェクトは、たとえば①小売業での需要予測、②製造業での需要予測など各社ごとに計6事例あり、①では「スーパーマーケット運営事業者が、 過去の売上データや気温等のデータも用い、特定の食料品の売上金額を予測」するという課題に岡山県の企業が、②では「部品製造事業者が、取引先から受ける内示(3カ月後の発注数の概算通知)について、過去データから内示のズレを予測し、将来の受注量を精緻に予測」するという課題に静岡県の企業が取り組んだ。ほか、③東京都の機械部品製造/卸売事業者による「需要予測」の事例、④静岡県の樹脂加工事業者による「加工図面からの自動見積」の事例、⑤東京都の印刷事業者による「工数予測/工数最適化」の事例、⑥大阪府の部品製造事業者による「センサーデータを用いた環境分析」の事例が紹介されている。

 うち、上記②の成果によれば「AIによる予測と実際の発注数の誤差が、内示と実際の発注数の誤差の半分以下となったケースも存在」などと報告されており、取組内容やAIモデルの概要、具体的な成果についてはぜひ本事例集を参照されたい。

 

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