改訂CGコードを踏まえ「知財投資・活用戦略の有効な開示及び
ガバナンスに関する検討会」が初会合
――価値協創ガイダンスに沿った形でガイドライン策定へ、中小企業も視野に年内取りまとめ予定――
「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(座長・加賀谷哲之一橋大学商学部教授)の初会合が8月6日、開催された。仮称「知的財産投資・活用戦略に関する開示ガイドライン」の年内取りまとめ・策定を目的とする。8月26日には第2回会合が予定されている。
委員は座長を始めとする学識経験者、企業の知財部門関係者、投資家・金融機関関係者、コーポレート・ガバナンス関係の有識者など計16名で構成し、金融庁企業開示課長・特許庁企画調査課長・東京証券取引所上場部長がオブザーバー参加。事務局は関係機関の協力を得て内閣府知的財産戦略推進事務局および経済産業省経済産業政策局産業資金課が務めるものとされた。本検討会の議事や資料を紹介するウェブページは知的財産戦略本部(本部長・首相)内に開設されている。
わが国企業が知財投資・活用の重要性を認識し、知財に積極的に投資、その活用を促す仕組みを構築するとともに、知財投資・活用に積極的に取り組む企業に対しては必要な資金が供給されるようなメカニズムを構築することが必要であるとして、(ア)「知的財産」を明記した本年6月のコーポレートガバナンス・コード改訂を踏まえ「企業がどのような形で知財投資・活用戦略の開示やガバナンスの構築に取り組めば、投資家や金融機関から適切に評価されるかについて、分かりやすく示すことが有効」であるとの視点から、(イ)2017年5月29日付で経済産業省が公表している「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス−ESG・非財務情報と無形資産投資−」(価値協創ガイダンス)に沿った形で「知財投資・活用戦略の開示・発信の在り方や社内におけるガバナンスの在り方等について深堀をしたガイドライン」を策定する。本「知的財産投資・活用戦略に関する開示ガイドライン」(仮称)は「上場企業のみならず、中小・スタートアップ企業にとっても有用なものとなることを目指す」との表明が併せてなされている。
公表された主な検討事項は「ガイドラインの対象とすべき『知財』『知財投資』の範囲」「知財投資・活用戦略の開示範囲・内容の考え方」「知財投資・活用戦略の実行に向けたガバナンスの在り方」「知財投資・活用の指標の在り方」など。知的財産戦略推進事務局の当日配付資料によると、たとえば「知財」「知財投資」の範囲に関しては、知的財産推進計画2021(2021年7月13日・知的財産戦略本部決定)における「特許権、商標権、意匠権、著作権といった知的財産権だけではなく、データ、ノウハウ(営業秘密)、顧客ネットワークといった幅広い知財を含めて、これらを用いてどのようなビジネスモデルでマネタイズするかという点に主眼を置いたものとすべきである」とする記載を紹介。次の13点を「検討の視点」として挙げている。
(1)企業価値向上、資金獲得に向けた開示・発信、(2)経営陣の意識変革・ガバナンス体制の構築、(3)戦略的意思の表明の開示・発信、(4)価値協創ガイダンスの価値創造ストーリーに沿った開示・発信、(5)成長投資としてのESG投資の加速につながる開示・発信、(6)知財投資・活用度合いの指標化、(7)成功事例の紹介、(8)多様な開示・発信方法の許容、(9)秘匿すべき機微情報の扱い、(10)投資家・金融機関に求められるアクション、(11)専門調査会社等の活用、(12)スタートアップのイノベーション機能の活用、(13)知財・知財投資の対象範囲。
検討会は今後月に1~2回程度の会合をかさね、11月に上記ガイドラインの骨子案を取りまとめたのち、12月にはガイドライン案として公表、広く意見募集を行う予定である。