SH3796 金融庁、「経営者保証に関するガイドライン」の活用に係る組織的な取組み事例集(令和3年10月改訂版)の公表 小野塚格/三角侑子(2021/10/20)

取引法務担保・保証・債権回収

金融庁、「経営者保証に関するガイドライン」の活用に係る組織的な取組み事例集(令和3年10月改訂版)の公表

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

弁護士 小野塚   格

弁護士 三 角 侑 子

 

1 はじめに

 このたび、金融庁より「『経営者保証に関するガイドライン』の活用に係る組織的な取組み事例集(令和3年10月改訂版)」(以下「本事例集」)が公表された。

 本事例集は、2019年8月に公表された「『経営者保証に関するガイドライン』の活用に係る組織的な取組み事例集」(以下「旧版」)を、複数の取組み事例を追加して改訂するものである。

 

2 「経営者保証に関するガイドライン」の概要

 「経営者保証に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」)は、中小企業の経営者保証に関する契約時および履行時等における中小企業、経営者および金融機関の対応についての自主的自律的な準則として、経営者保証に関するガイドライン研究会(事務局:日本商工会議所・一般社団法人全国銀行協会)により2013年12月に策定され、2014年2月からその適用が開始された。

 ・経営者保証に関するガイドライン
 ・事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則
 ・「経営者保証に関するガイドライン」Q&A
 ・「経営者保証に関するガイドライン」に基づく保証債務の整理に係る課税関係の整理

 経営者保証には、経営への規律付けや信用補完として資金調達の円滑化に寄与する面がある一方、経営者による思い切った事業展開や、保証後において経営が窮境に陥った場合における早期の事業再生を阻害する要因となっているなど、企業の活力を阻害する面もある。ガイドラインは、中小企業金融における経営者保証について合理性が認められる保証契約の在り方等を示すとともに、主たる債務の整理局面における保証債務の整理を公正かつ迅速に行うための準則を定めることにより、経営者保証の課題に対する適切な対応を通じてその弊害を解消し、もって関係者間の継続的かつ良好な信頼関係の構築・強化とともに、中小企業の各ライフステージにおける中小企業の取組意欲の増進を図り、ひいては中小企業金融の実務の円滑化を通じて中小企業の活力が一層引き出され、日本経済の活性化に資することを目的としている。

 ガイドラインには、新規融資時、融資実行後および事業承継の局面における経営者保証に依存しない融資の実現に向けた準則が定められている。また、事業再生・廃業時における保証債務整理の準則も定められており、経営者が早期の事業再生または廃業を決断する等の一定の条件を満たした場合には、一定期間の生計費や華美でない自宅等の破産手続における自由財産(破産法34条3項、4項)を超える資産(いわゆる「インセンティブ資産」)を手元に残し得るとするなど、主たる債務を含む早期の債務整理を動機付けるような制度設計となっている。

 金融庁もガイドラインの上記意義を踏まえて、ガイドラインを融資慣行として浸透・定着させていくことが重要であると考えているとのことであり、2013年12月2019年12月に金融機関に対しガイドラインの積極的な活用を要請するとともに、金融機関の組織的な取組み事例を収集した事例集(本事例集)と個別具体的な活用事例を収集した参考事例集を公表し、定期的にアップデートしている。また、中小企業庁も政府系金融機関及び信用保証協会におけるガイドラインの活用実績を公表し、定期的にアップデートしている。

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(おのづか・いたる)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。1999年早稲田大学法学部卒業。2004年早稲田大学大学院法学研究科修了。2005年弁護士登録(東京弁護士会)。事業再生・倒産処理案件を柱として、M&A、危機管理、訴訟・紛争解決、労務、会計・税務等を組み合わせた総合的なリーガルサービスを提供している。株式会社地域経済活性化支援機構(REVIC)出向中を中心に「経営者保証に関するガイドライン」を利用した経営者の債務整理案件を多数手がけている。2016年度及び2021年度東京弁護士会倒産法部事務局次長。杏林大学総合政策学部非常勤講師(倒産法及び労働法)。

 

(みすみ・ゆうこ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2018年慶應義塾大学法学部卒業、同年弁護士登録(第二東京弁護士会)。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。

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