◇SH3798◇中企庁、M&A実施後の経営統合に係る指針の検討で「中小PMIガイドライン(仮称)策定小委員会」の初会合を開催――事業承継ガイドライン改訂検討会に設置、年度内策定に向けて委員会取りまとめは2022年2月ころ予定 (2021/10/21)

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中企庁、M&A実施後の経営統合に係る指針の検討で
「中小PMIガイドライン(仮称)策定小委員会」の初会合を開催

――事業承継ガイドライン改訂検討会に設置、年度内策定に向けて委員会取りまとめは2022年2月ころ予定――

 

 中小企業庁は10月5日、「中小PMIガイドライン(仮称)策定小委員会」(座長・松中学名古屋大学大学院教授。以下「委員会」という)の初会合を開催した。

 中小企業を取り巻く最近の状況を踏まえて9月1日に開かれた「事業承継ガイドライン改訂検討会」(座長・山本昌弘明治大学教授。以下「検討会」という)の初会合において、委員会を検討会の下に設置することが決議されていた。中小企業のM&Aでは「M&A実施前における経営状況や経営課題等の現状把握(見える化)、経営改善等(磨き上げ)、M&A実施後の経営統合(PMI:Post Merger Integration)が重要な課題である」ところ、(ア)譲受側の中小企業においてM&A前後の取組みの重要性に関する認識が不足しており、独自の予算等のリソースが確保されていることは少ない、(イ)PMIにおいて支援すべき内容につきM&A支援機関側での共通認識が形成されておらず、中小企業向けにPMIを支援する事業者も極めて少ないといった事情を踏まえ「中小M&Aにおいて望まれるPMIのあり方及びPMIの進め方を示す」ための指針を策定する(以上、2021年9月1日・中小企業庁財務課「中小PMIガイドライン(仮称)策定小委員会の設置について」参照)。もって、中小M&Aを実際の事業成長につなげる狙いである。

 委員会は学識経験者・中小企業関係者・コンサルティング会社・ファンド運営会社・中小企業診断士・弁護士ら計10名で構成した。座長のみ1名が事業承継ガイドライン改訂検討会の委員を兼ねる。議事は原則非公開であるが、配付資料は原則として公開、議事要旨が会合終了後1週間以内に事務局の責任において作成・公開される。

 検討会の9月1日会合では、中小PMIガイドライン(仮称)の策定に向けた方向性について、事務局の提案に基づき「当事者である中小企業(M&Aの譲受側)だけでなく、中小PMI支援に携わる支援機関向けに、全ての中小M&A案件を念頭に置きつつ、規模等に応じて記載内容に差を設ける方向で検討を進めるべき」とされた。議事要旨によると「M&Aの準備からPMIまではつながっている取組であることを意識して記載してはどうか」「比較的小規模な事業者はPMIと言われてもピンと来ないだろうが、引継ぎの一種と言えば理解できるのではないか」といった見解がみられる。

 委員会の10月5日会合においては、事務局から検討方針に関する説明がなされたのち、論点として①検討に当たって特に考慮すべき中小企業の「特性」、②検討に当たって特に考慮すべきM&Aの「実施形態等」、③対象とするPMIの射程、④結合・発展のプロセスで検討すべき事項に関する審議が行われている。

 中小企業庁財務課による「事務局説明資料」によれば、各種アンケート・調査により、中小M&Aにおいて(a)「譲受側は、期待するシナジー効果の発現、円滑に組織融合できるかどうかを心配する声が多い。一方、譲渡側は、M&A後の従業員の雇用、事業の将来性、取引先との関係維持を重視する声が多い」こと、(b)「M&Aを実施後の総合的な満足度について見てみると、『期待をやや下回っている』、『期待を大きく下回っている』と回答した割合は24%。満足度が期待を下回った理由として、譲受側との融合、買収価格に対して相乗効果が出なかったこと等があげられており、M&A後の取組の成否が満足度に大きく影響していると考えられる」ことが明らかになっている。

 また一方、増加傾向にあるとされる中小M&Aにおいて(c)「過去に中小企業がM&Aの譲受側になったことがあるかのアンケート調査では、個社ごとで見ると実施件数は少ない」(編注・M&Aの経験が少なく、PMIを含むM&A前後の取組みに不慣れとされる)、(d)「M&A支援機関においてPMI支援サービスを提供している割合は比較的低い」といった事情もあり、中小企業庁では「中小M&A推進計画において示した課題と取組方針に基づき、中小M&AにおけるPMIへの段階的な支援の充実に向け、中小M&AにおけるPMIに関する指針として同ガイドラインを策定したい」とする意向である。

 これまでに明らかになっている「中小PMIガイドライン(仮称)に関する検討方針の大枠」4点は、次のとおりである。(1)超小規模案件(譲渡側売上高イメージ3千万円以下【要検討】)でも取り組むべき最低限の内容を規定。(2)その上で、PMIに人員や費用等を当てられる余裕のある中小企業向けに、理想的に取り組むことが望ましい内容も規定。(3)ただし、理想的な内容についても、多くの中小企業の参考になるものとなるよう、①中規模案件の中間層(譲渡側売上高イメージ3億円程度【要検討】)を念頭に検討し、②中小企業が必要に応じて取捨選択できるようメニュー化して内容を提示する。(4)記載内容については、中小企業が割けるリソース等の実態を十分に踏まえつつ、専門技術的なものに終始することなく、PMIに関与すべきものが配慮すべき事項も盛り込む。なお、上記・各論点に関する詳細については「事務局説明資料」23頁以下を、各論点を巡る意見状況については「議事要旨」をそれぞれ適宜参考とされたい。

 委員会では今後月に1回の審議をかさね、2022年2月開催予定の第5回会合で「最終化に向けたレビュー」を行うとされている。委員会設置時に示された日程案と併せて考慮すると、本会合において委員会レベルの取りまとめを行い、3月上旬に予定される検討会で最終決定、2021年度中に公表される見込みである。

 

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