◇SH3913◇中企庁、いわゆる転嫁円滑化施策パッケージを具体化する「取引適正化に向けた5つの取組」を公表――下請中小企業振興法に基づく「助言(注意喚起)」の実施、「知財Gメン」の創設など (2022/02/22)

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中企庁、いわゆる転嫁円滑化施策パッケージを具体化する
「取引適正化に向けた5つの取組」を公表

――下請中小企業振興法に基づく「助言(注意喚起)」の実施、「知財Gメン」の創設など――

 

 中小企業庁は2月10日、同日開かれた「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」の第3回会合において経済産業大臣が発表したとし、「取引適正化に向けた5つの取組」を公表した。

 未来を拓くパートナーシップ構築推進会議(以下「推進会議」という)は「労務費等の価格転嫁に関し、下請中小企業振興法(昭和45年法律145号)第3条に規定する振興基準の遵守等個社による自主行動宣言を通じ、発注側たる大企業と受注側たる中小企業の協議を促進するとともに、サプライチェーン全体の生産性向上等の取組を推進し、大企業と中小企業が共に成長できる持続可能な関係を構築するため」(2020年3月30日付内閣府特命担当大臣(経済財政政策)・経済産業大臣申合せ「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議の開催について」参照)に発足、同年5月18日に初会合を開催。この会合を受けて導入された「パートナーシップ構築宣言」の宣言企業数は、中企庁の発表によると、2021年9月27日時点で1,519社、同年10月18日時点で2,052社となり、翌10月19日には「成長戦略実行計画(令和3年6月18日閣議決定)で掲げる目標数の2,000社を達成しました」とアナウンスされた。

 推進会議の今般の会合における内閣府提出資料によると、宣言企業数は本年(2022年)1月末時点で5,554社、2月9日時点で6,004社にのぼる。経済産業省からは資料「パートナーシップ構築宣言等に関する現状と今後の取組」が示され、宣言企業のうち資本金3億円以上の大企業が約500社と1割程度にとどまっていることを明らかにするとともに、今後の取組みとして、パートナーシップ構築宣言を巡り(ア)コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針において望ましい取組みであることを示す、(イ)経産省で実施している補助金の加点措置(事業再構築補助金等)について対象範囲を他省庁の補助金に拡大することを検討する、(ウ)宣言企業全社への書面調査を通じて宣言内容の実効性向上を図る――といった諸施策を掲げた。

 公表された「取引適正化に向けた5つの取組」は上記・経産省資料および「参考配布資料」を抜粋して取りまとめており、昨年(2021年)12月27日に決定・公表された「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」(内閣官房(新しい資本主義実現本部事務局)・消費者庁・厚生労働省・経済産業省・国土交通省・公正取引委員会。2021年12月27日付閣議了解「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化の取組について」に基づく。以下「転嫁円滑化施策パッケージ」という) における中企庁の取組みを具体化したものと位置付けられる。

 掲げられる「5つ」は(1)価格交渉のより一層の促進、(2)パートナーシップ構築宣言の大企業への拡大、実効性の向上(編注・上記ア~ウにより構成。ウでは下請事業者に対するアンケート調査も実施される)、(3)下請取引の監督強化、(4)知財Gメンの創設と知財関連の対応強化、(5)約束手形の2026年までの利用廃止への道筋――である。

 たとえば、上記(1)に関し、①下請中小企業振興法に基づく「助言(注意喚起)」の実施、②価格交渉促進月間の3月における実施、③今年度内を想定した下請中小企業振興法の振興基準の改正が行われる。①は価格交渉・転嫁の状況のよくない個別の企業に対して2月中に順次実施していく。

 また(3)では、①取引調査員(いわゆる下請Gメン)を来年度・4月から倍増する方針に加え、支援機関や補助金等の紹介といったアドバイス機能の強化、AI等による取締りの効率化などの検討も表明。②商工会・商工会議所と下請かけこみ寺の連携による相談体制の強化、③業種別ガイドライン・自主行動計画の拡充・改定等について、それぞれ「年度内から実施」「順次実施」する。

 上記(4)を巡っては、①知財Gメンの新設(今年度内にヒアリングを開始)により知財関連の取引問題に対して専門的に対応していくほか、②中企庁に弁護士・弁理士等の専門家による「知財取引アドバイザリーボード」を設置、今年度内に立ち上げるとともに、③商工会議所、工業所有権情報・研修館(INPIT)など関係機関との連携の強化を行っていく。

 なお(5)に絡む動きとして、中企庁と公正取引委員会は2月16日、下請代金支払遅延等防止法(下請法)に基づく2021年7月26日付「下請事業者との取引に関する調査について」の回答で「サイトが60日を超える手形等により下請代金を支払っている」とした約5,000の親事業者に対し、手形等のサイトを可能なかぎりすみやかに60日以内に短縮するよう連名により要請している。

 

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