中国:改正中国独禁法の要点
どこが日本企業にとって重要か(1/4)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 鹿 はせる
1 中国独禁法の改正及び施行
中国独禁法の改正が2022年6月24日に成立し、8月1日から施行された。同法の改正については2020年1月には競争当局である国家市場監督管理総局(SAMR)から、2021年10月には全国人民大会常務委員会から相次いで改正案が公表されていたが、ようやく正式に成立・施行できる運びとなった。また、2022年6月27日には、企業結合届出、独占的協定及び市場支配的地位の濫用等に関する下位法令の改正案も一挙に公表され、日本企業に大きな影響を与えてきた中国の独禁法典及び実務は重要な変化を迎えることとなる。もっとも、改正法(案)は従来の実務を明文化したものも多く、本稿では、成立した中国独禁法本文と改正案が公表されている下位法令を併せ、①何が従来から実質的に変わったのか、及び、②何が日本企業にとって重要な改正か、という視点から要点解説を試みる[1]。
2 中国独禁法改正の要点
⑴ 処罰の厳格化
以下のとおり、中国独禁法の改正法では法令に違反した場合の制裁金が旧法から大幅に上昇し、特に日本企業にとっては、企業結合[2]届出義務違反に対する制裁金が10倍以上となったことが重要である。また、改正法では違反があった場合の原則としての制裁金と、情状が悪質な場合の制裁金規定が分けて規定されており、情状が悪質な場合は原則の5倍以下の制裁金が課され得る[3]。更に、独占的協定(カルテル)[4]については、協定の当事者となる事業者だけでなく、事業者内で独占的協定を主導した個人についても、制裁規定が設けられた点が重要な改正である。
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(ろく・はせる)
長島・大野・常松法律事務所東京オフィスパートナー。2006年東京大学法学部卒業。2008年東京大学法科大学院修了。2017年コロンビア大学ロースクール卒業(LL.M.)。2018年から2019年まで中国大手法律事務所の中倫法律事務所(北京)に駐在。M&A等のコーポレート業務、競争法業務の他、在中日系企業の企業法務全般及び中国企業の対日投資に関する法務サポートを行なっている。
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