「新しい資本主義実現本部」
――各省庁における「スタートアップ育成5か年計画」の進捗状況を公表――
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業
弁護士 金 子 涼 一
弁護士 菅 隆 浩
1 はじめに
岸田内閣は2022年12月23日に「スタートアップ5か年計画」[1]を閣議決定し[2]、以下の3本柱の取組を一体として推進をしていくことを明らかにしている。
- ① スタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築
- ② スタートアップのための資金供給の強化と出口戦略の多様化
- ③ オープンイノベーションの推進
岸田内閣は「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとした新しい資本主義を実現していくことを目的として、「新しい資本主義実現本部」を2021年10月15日の閣議において決定していた[3]。
岸田内閣は、自らが掲げた「スタートアップ5か年計画」のもとで、「スタートアップ創出にかかる施策の執行事務の運営に万全を期する」ため、上記の「新しい資本主義実現本部」の関連会議として、「スタートアップ創出調整連絡会議」[4]で議論を重ねている。
この度、「スタートアップ創出調整連絡会議」の第3回会議において、各省庁における「スタートアップ育成5か年計画」の進捗状況に関する資料が公表され[5]、スタートアップ関連の実務家からの注目を集めている。
以下では、各省庁が公表した進捗状況に関して、その取組の種類・想定しているユーザーの観点から分類の上、その概要を説明することとする(紙幅の関係ですべてを紹介しているわけではない点に留意されたい。)。
2 スタートアップに対する補助金交付を通じた支援
⑴ SBIR制度の補助金付与対象の拡充(内閣府)[6]
既存のSBIR(Small/Startup Business Innovation Research)制度[7]において、宇宙、ロボット、防災、先進医療・農業等の先端技術分野をターゲットした補助金制度の拡充がなされる。すなわち、これまでは、補助金対象は概念実証(Proof of Concept)・実現可能性(Feasibility Study)から初期の研究開発に限られていたところ、このたび事業化の段階にまで拡充されることとなった(従前は、事業化の段階については、「政府調達やそれに向けた実証・テストマーケティング、技術調査事業、民間企業とのマッチング等による支援」であり補助金対象ではなかった。)。
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(かねこ・りょういち)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー(弁護士・ニューヨーク州弁護士)。東京大学法学部・同法科大学院卒業、カリフォルニア大学バークレー校・ロースクール修了(LL.M., Business Law Certificate)。M&A・投資やクロスボーダー取引を中心に企業法務全般に幅広い知見を有する。スタートアップの投資・事業提携に関するベンチャー・キャピタルや事業会社へのアドバイス、スタートアップの法務相談に豊富な経験があり、スタートアップ関連の執筆やセミナーも精力的に行う。
(すが・たかひろ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業スペシャル・カウンセル。2009年 京都大学法科大学院卒業。2010年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2014年7月~2015年6月 外資系証券会社投資銀行本部出向勤務。2016年8月~2017年5月米国University of California, Berkeley, School of Law (LL.M.)へ留学。
<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。
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