公証制度をめぐる電子化の状況と検討課題
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業
弁護士 宮 川 賢 司
1 はじめに
2021年2月9日、デジタル庁設置等に関するデジタル化関連法案が第204回通常国会に提出された。当該法案の内容は多岐に渡るが、たとえば、「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案」[1](以下「デジタル化整備法案」という。)が成立すれば、これまで公正証書等の書面による作成が要求されていた定期借地権設定契約・定期建物賃貸借契約について、電磁的記録による作成も認められるようになる(改正後借地借家法22条2項・38条2項)。
このようなデジタル化の流れからすると、これまで公証制度[2]を利用して作成してきた、公正証書[3]の作成、定款や私署証書の認証[4]、確定日付の付与等についてもデジタル化できる方が望ましく、そのために「電子公証制度」が設けられている。
しかし、2021年4月13日開催の内閣府規制改革推進会議第14回 投資等ワーキング・グループ[5](以下「第14回投資等WG」という。)で議論されているように「電子公証制度」については様々な課題があるため、これらを解決しない限りデジタル化が阻害されるおそれがある。そこで本稿では、電子公証制度の現状と課題について検討する。
2 電子公証制度の現状(現状のまとめについては、別紙1参照)
⑴ 電子公証制度とは
電子公証制度は、電子文書(電磁的記録)について、電子公証事務を行う公証人である指定公証人が、電子文書の認証または日付情報の付与を行うものをいう[6]。電子公証制度の現状との関係では、電子文書の認証(電子認証)を中心に検討する。
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(みやがわ・けんじ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業スペシャル・カウンセル弁護士。1997年慶應義塾大学法学部卒業。2000年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2004年ロンドン大学(University College London)ロースクール(LLM)修了。2019年から慶應義塾大学非常勤講師(Legal Presentation and Negotiation)。国内外の金融取引、不動産取引、気候変動関連法務および電子署名等のデジタルトランスフォーメーション関連法務を専門とする。
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