2020年4月9日号
ベトナム:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 澤 山 啓 伍
はじめに
4月7日に新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が発出され、国内の感染対策は新たなフェーズに入りました。多くの海外地域においては厳格な外出制限や営業禁止等のロックダウン措置が継続している一方、4月8日には中国武漢市の封鎖が解除されるなど、一部地域においては収束に向けた兆しも見え始めています。
本記事では速報ベースで各国の方針や影響拡大状況の概要につきお知らせ致します。なお、本記事は感染拡大が続く間、不定期に配信していきたいと思いますが、同感染症の拡大状況については日々状況が変化している中、本記事の内容がその後変更・更新されている可能性については十分ご留意の上参照ください。本記事の内容は、特段記載のない限り、日本時間2020年4月8日夜時点で判明している情報に基づいています。
全体概況 死亡者:0人、感染者数:251人(4月8日現在) ベトナム国内での感染者数は比較的抑えられており、感染者の半数は既に完治しているが、ベトナム政府は4月1日から15日間全土での「社会隔離」の実施を指示し、全ての国民に自宅待機を求めている。 |
主な政府発表
- ・ 首相は、4月1日、新型コロナウイルス感染症を「全国流行病」と宣言した。これにより、感染防止法に基づき全国規模で飲食施設の運営停止や流行地域へのアクセスの制限等の措置をとることが可能になった。
- ・ 4月1日から15日間、全土での「社会隔離」の実施を指示する首相指令第16/CT-TTg号を公布。全ての国民は自宅で待機し、(a)食料、食品、薬品の調達や健康診断、自然災害、火災、救急等緊急の場合、(b)国家機関、外交機関、必需品、必需サービスを生産・提供する企業・工場等で働く目的等、本当に必要な場合に限って外出するよう求めるとともに、他人と接触する際には2メートル以上の間隔を保ち、会社・学校・病院以外や公共の場所において3人以上で集まらないことを求めている。首相指令第16/CT-TTg号の解説として政府官房が発行した2020年4月3日付け公文書第2601/VPCP-KGVXでは、事業の継続が認められる民間企業として以下を挙げている。工場・製造施設、交通・建設工事、食品・食料・医薬品・ガソリン・石油・電気・水・エネルギー等必須のサービス又は商品を提供する事業所、教育機関、銀行、金庫、公証・法務サービス・車両登録・担保付取引登録等銀行業務又は企業の補助サービスに直接関連するサービス、証券、郵送・通信、輸送補助サービス、輸出入、ヘルスケア・医療サービス、葬儀サービス等。
- ・ 首相指令第16/CT-TTg号には、一部例外を除く公共交通手段による旅客運搬の停止も含まれている。これに基づき、各地で路線バス、タクシー、配車サービス等の運行停止、国内航空便、南北鉄道の大幅減便が行われている。
- ・COVID-19の流行により影響を受けた企業に対して、労働組合費や社会保険料の支払期限を延期する公文書が発行されている [1]。また、同様に税金や土地賃借料の支払期限の延期を定める政令の草案が検討されている。
渡航情報
- ・ 2020年3月22日以降、全ての外国人の入国を原則停止した(政府官房通知第118/TB-VPCP号)。
- ・ 4月1日から同15日までの間、外交目的等で必要な場合を除き、ベトナム着の全国際旅客便の運行を停止する他、国内線もハノイ、ホーチミン、ダナンの三都市を発着する数便の他は運航を停止する。
- ・ ベトナム航空は日本路線の全区間の運休を5月末まで延長した。日系航空会社も日越間の航空便を運休又は減便し、4月15日までの期間はベトナムから日本への復路便のみ運行している。
その他
- ・ 首相指令第16/CT-TTg号の解釈、運用の厳格さは各地方で異なっており、それぞれの地域での状況に留意が必要である。
- ・ 「社会隔離」の実施後、ハノイ市では不必要な外出をしていたとして過料を科した例も出ている。
- ・ 報道等によれば、日系企業で駐在員の一時帰国の対応を取った企業は1割強、帯同家族の帰国を実施した企業は3割強とのこと。
[1] 労働組合費につき、ベトナム労働総同盟によるオフィシャルレター第245/TLD号、社会保険料につき、ベトナム社会保険庁によるオフィシャルレター第860/BHXH-BT号
(さわやま・けいご)
2004年 東京大学法学部卒業。 2005年 弁護士登録(第一東京弁護士会)。 2011年 Harvard Law School卒業(LL.M.)。 2011年~2014年3月 アレンズ法律事務所ハノイオフィスに出向。 2014年5月~2015年3月 長島・大野・常松法律事務所 シンガポール・オフィス勤務 2015年4月~ 長島・大野・常松法律事務所ハノイ・オフィス代表。
現在はベトナム・ハノイを拠点とし、ベトナム・フィリピンを中心とする東南アジア各国への日系企業の事業進出や現地企業の買収、既進出企業の現地でのオペレーションに伴う法務アドバイスを行っている。
長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/
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