◇SH1963◇チェックアンドバランスが機能するコーポレートガバナンス(10) 饗庭靖之(2018/07/12)

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チェックアンドバランスが機能するコーポレートガバナンス(10)

首都東京法律事務所

弁護士 饗 庭 靖 之

 

11 社外取締役が機能するようにするのは会社の責務であること

 社外取締役の要件が社外出身で非執行で非常勤であることから、社外取締役は、会社の業務と社員について十分知らない可能性が高くならざるを得ない。しかし、社外取締役を、取締役会という会社の中枢に置くことが会社にとって欠くべからざるものとされていることからは、社外取締役が、会社において所期の機能を果たせるようにすることは、会社の責務である。

 そのために、会社は次のような点について努力することが求められると考えられる。

 (1) 社外取締役の選定基準の確立

 株主総会への取締役選任議案の候補者決定権は実質的に代表取締役にある。しかし、社外取締役は、取締役会の構成員として、代表取締役の経営判断に対する助言や監視を行っていくことが必要であり、そのためには、代表取締役の意向に左右されて、行動の独立性が影響を受けることを防ぐことが必要である。

 社外取締役は、代表取締役の権力に対する監督機能を果たせるような人選がされるように、恣意性のない明確で透明性のある選任基準が作成されることが必要である。

 (2) 社外取締役への研修

 社外取締役の資格要件からは、社外取締役は会社の業務と社員について知悉していない可能性が高いため、社外取締役に研修の機会を提供する必要性は高い。

 コーポレートガバナンス・コード補充原則4-14は、「社外取締役・社外監査役を含む取締役・監査役は、就任の際には、会社の事業・財務・組織等に関し必要な知識を取得し、取締役・監査役に求められる役割と責務(法的責任を含む)を十分に理解する機会を得るべきであり、就任後においても、必要に応じ、これらを継続的に更新する機会を得るべきである。」としている。

 (3) 社外取締役への情報提供

 社外取締役が取締役会における経営機能と監督機能を実効的に果たせるためには、正確で、わかりやすく、最新の事情を踏まえた、質の高い情報が網羅的に取得できることが重要である。このため、社外取締役に、取締役会の議案の事前説明、質の高い資料(議案書、報告書、参考資料等)の提供、意思決定プロセスの工夫等の取組みを通じて、十分な情報を提供する必要がある。

 (4) 取締役会の審議形態の改善

 取締役会の議案の設定を見直し、社外取締役が有効に議論に参加できるようなテーマ設定がされる必要がある。

 これまで多くの会社では、法令で求められるよりも詳細な個別の業務執行事項が、画一的な基準で取締役会の決議事項とされてきた結果、非常に多くの業務執行事項が取締役会に付議されている。

 しかし、社外取締役会の割合を高めて、個別の業務執行事項の決定を経営陣に移譲していくことに対応して、取締役会の付議事項の見直しが必要となっている。

 個別の業務執行事項を取締役会に付議する範囲を絞り、その代わりに会社の経営方針等の重要な案件について重点的に審議することができるように、付議基準を見直す必要がある。

 

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