債権法改正後の民法の未来 41
暴利行為(3)
清和法律事務所
弁護士 山 本 健 司
Ⅲ 議論の経過
(3) 第2ステージ
第2ステージでは、第30回会議(H23.7.26)において、部会資料27の下記のような論点設定のもとに議論がなされた。すなわち、暴利行為の明文化の是非という問題と、明文化する場合の具体的要件という問題が、区別して論じられた。[1]
【 部会資料27 】 第1 法律行為に関する通則 1 法律行為の意義及び効力
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第30回会議の議論では、暴利行為の明文化の是非という問題について、多くの委員から賛成意見が述べられた。もっとも、裁判官委員から、事案に応じた柔軟な解決や暴利行為法理の自由な発展形成を阻害するとして反対意見が述べられた。また、事業者委員から、濫用のおそれや事業活動への萎縮効果を懸念するとして反対意見が述べられた。
また、暴利行為を明文化する際の具体的な要件という問題については、研究者委員や弁護士委員などから現代的暴利行為論に基づいた立法化に賛成する意見が多く述べられた。その一方で、最低限のコンセンサスがある等として昭和9年の大審院判例の伝統的準則での明文化を支持する意見も述べられた。
(4) 中間試案
第2ステージ終了時にとりまとめられた「中間試案」では、暴利行為について下記のようにとりまとめられている。[2]
【 中間試案 】 第1 法律行為通則 2 公序良俗(民法第90条関係)
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すなわち、中間試案では、暴利行為の論点について、①暴利行為を明文化する方向で検討するとしている。また、②立法化する際の具体的な要件のうち、前段要件については、具体的な列挙事由は「窮迫、軽率、無経験」という伝統的準則が列挙する3事由に留めつつ、現代的暴利行為論の指摘を踏まえて「その他」以下で例示列挙であることを明確にしている。さらに、③後段要件については、現代的暴利行為論の指摘を踏まえて「不利益を与える」場合を付加しつつ、慎重論にも配慮して伝統的準則の「著しく過大な」という要件を維持している。加えて、④伝統的な準則をそのまま立法化すべきであるという意見や、立法化に反対する意見も存在することを併記している。
[1] 第30回会議の配付資料・議事録(http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900082.html)
[2] 民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明(www.moj.go.jp/content/000112247.pdf)