◇SH2217◇文化庁、著作権法施行令・施行規則の改正で意見募集を開始(2018/11/29)

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文化庁、著作権法施行令・施行規則の改正で意見募集を開始

――著作権法改正法(平成30年法律第30号)に伴う改正――

 

 文化庁は11月17日、「著作権法施行令の一部を改正する政令(案)」及び「著作権法施行規則の一部を改正する省令(案)」に関する意見募集を開始した。12月9日まで意見を募集した上で確定し、一部を除き来年1月1日から施行することとしている。

 著作権法については、「著作権法の一部を改正する法律」(5月25日公布・平成30年法律第30号)で次のような改正が行われた(後掲の別稿参照。以下では改正後の著作権法を「新法」と略す)。

(1) デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備(新法30条の4、47条の4、47条の5等関係)

  1. ① 著作物の市場に悪影響を及ぼさないビッグデータを活用したサービス等のための著作物の利用について、許諾なく行えるようにする。
  2. ② イノベーションの創出を促進するため、情報通信技術の進展に伴い将来新たな著作物の利用方法が生まれた場合にも柔軟に対応できるよう、ある程度抽象的に定めた規定を整備する。

 

(2) 教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備(新法35条等関係)

 ICTの活用により教育の質の向上等を図るため、学校等の授業や予習・復習用に、教師が他人の著作物を用いて作成した教材をネットワークを通じて生徒の端末に送信する行為等について、許諾なく行えるようにする。

 

(3) 障害者の情報アクセス機会の充実に係る権利制限規定の整備(新法37条関係)

 マラケシュ条約(視覚障害者や判読に障害のある者の著作物の利用機会を促進するための条約)の締結に向けて、現在視覚障害者等が対象となっている規定を見直し、肢体不自由等により書籍を持てない者のために録音図書の作成等を許諾なく行えるようにする。

 

(4) アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等(新法31条、47条、67条等関係)

  1. ① 美術館等の展示作品の解説・紹介用資料をデジタル方式で作成し、タブレット端末等で閲覧可能にすること等を許諾なく行えるようにする。
  2. ② 国及び地方公共団体等が裁定制度を利用する際、補償金の供託を不要とする。
  3. ③ 国会図書館による外国の図書館への絶版等資料の送付を許諾なく行えるようにする。

 今回の意見募集では、①著作権法施行令について、新法で新たに政令委任された事項を中心として各種規定の整備等を行うとともに、②著作権法施行規則についても、本政令案による改正後の新施行令において新たに省令委任された事項を中心として各種規定の整備等を行うものである。

 上記の著作権法改正内容のうち(1)に該当する部分の概要を紹介すると、次のようになっている(なお、以下では、改正後の著作権法施行令を「新令」、改正後の著作権法施行規則を「新規則」と略す)。

 

[電子計算機による情報処理及びその結果の提供等の基準(新法47条の5、新令7条の4、新規則4条の4及び4条の5関係)]

○ 新法47条の5では、電子計算機を用いた情報処理により新たな知見又は情報を創出することによって著作物の利用の促進に資する行為(所在検索サービス(同条1項1号)、情報解析サービス(同条1項2号)、そのほか政令で定めるもの(同条1項3号))及びその準備を行う者のうち、それを「政令で定める基準」に従って行う者が、一定の要件の下、著作物の軽微利用等を行うことができる旨、規定している。

 

○ 新令7条の4第1項では、当該行為を行う者に関する「政令で定める基準」として、次のとおり規定する。

  1. Ⅰ① 「インターネット情報検索サービス」(送信可能化された検索情報に係るURL(送信元識別符号)を検索し、及びその結果を提供する行為(以下「送信元識別符号検索結果提供」という。))を行う場合にあっては、次に掲げる要件に適合すること。

    1. ⅰ) ID・パスワード等の受信制限手段が講じられている場合にあっては、当該手段を講じた者の承諾を得たものに限って提供すること。
    2. ⅱ) 送信元識別符号検索結果提供を適正に行うために必要な措置として文部科学省令で定める措置を講ずること。
  2. Ⅰ② 新法47条の5第2項の規定の適用を受けて作成された著作物等の複製物を使用する場合にあっては、当該複製物の流出の防止のために必要な措置を講ずること。
  3. Ⅰ③ Ⅰ①及び②のほか、当該行為に係る著作物等の利用を適正に行うために必要な措置として文部科学省令で定める措置を講ずること。

 

○ 新令7条の4第2項では、当該行為の準備を行う者に関する「政令で定める基準」として、次のとおり規定する。

  1. Ⅱ① 送信元識別符号検索結果提供の準備を行う場合にあっては、当該送信元識別符号検索結果提供を上記Ⅰ①の要件に適合させるために必要な措置を講ずること。
  2. Ⅱ② 新法47条の5第2項の規定の適用を受けて作成された著作物等の複製物の流出の防止のために必要な措置を講ずること。

 

○ 新規則4条の4では、上記Ⅰ①ⅱ) の「文部科学省令で定める措置」として、次に掲げる行為のいずれかが送信元識別符号検索結果提供を目的とする情報収集を禁止する措置に係る一般の慣行に従って行われている場合にあっては、当該行為に係る情報の提供を行わないことを規定する。

  1. ⅰ) robots.txtに次に掲げる事項を記載すること。

    1. ア 送信元識別符号検索結果提供を目的とする情報収集のためのプログラムのうち情報の収集を禁止するもの
    2. イ 送信元識別符号検索結果提供を目的とする情報収集を禁止する情報の範囲
  2. ⅱ) HTML等に、送信元識別符号検索結果提供を目的とする情報収集を禁止する旨を記載すること。

 

○ 新規則4条の5では、上記Ⅰ③の「文部科学省令で定める措置」として、業として当該行為を行う場合にあっては、次に掲げる措置を講ずることを規定する。

  1. ⅰ) 当該行為に係る著作物等の利用が新法47条の5第1項に規定する要件に適合するものとなるよう、あらかじめ、当該要件の解釈を記載した書類の閲覧、学識経験者に対する相談その他の必要な取組を行うこと。
  2. ⅱ) 当該行為に対する問合せを受けるための連絡先その他の情報を、当該行為の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により明示すること。

 

 

  1. 文化庁、「著作権法施行令の一部を改正する政令(案)」及び「著作権法施行規則の一部を改正する省令(案)」に関する意見募集の実施について(11月17日)
    http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185001015&Mode=0
  2. ○ 意見募集要領
    http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000180106
  3. ○「著作権法施行令の一部を改正する政令(案)」及び「著作権法施行規則の一部を改正する省令(案)」の概要
    http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000180107
  4. ○ 著作権法の一部を改正する法律・新旧対照表
    http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000180108
  5.  
  6. 参考
    SH1683 文科省、著作権法改正法案を国会に提出(2018/03/05)
    --デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備等--
    https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=5592450
  7.   SH1886 角野秀「著作権法の一部を改正する法律(平成30年法律30号)」(2018/06/05)
    https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=6338758

 

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