コーポレート・ガバナンス改革の深化に向けた取組みの現状が明らかに
――スチュワードシップ・コード受入れの機関投資家リストは公表拡充の提案――
「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(座長・池尾和人立正大学教授)の第16回会議が11月27日、「コーポレートガバナンス改革について」を議題として開かれ、上場企業や機関投資家における両コードへの対応状況など最新の取組みが明らかになった。
金融庁作成の会議資料では、(1)コーポレートガバナンス・コードに基づく各企業の取組みについて、①資本コストを意識した経営、②取締役会の機能発揮、③政策保有株式、④監査に対する信頼性の確保、⑤開示情報の充実の各観点から、また(2)スチュワードシップ・コードに基づく機関投資家側の取組みについては、⑥投資家の取組状況、⑦企業年金のスチュワードシップ活動に関して、それぞれ最近の状況が取りまとめられた(出典は各データに明記)。
上記①の観点からは、ガバナンス改革の進展に伴い企業のROE・PBRは全体として上昇したと評価。一方、4割の投資家が中長期的に望ましいとするROE水準(10〜12%)に達する企業は少数で、資本コストへの意識が未だ不十分な企業が多いとの指摘も紹介した。
②の観点からは(ア)独立社外取締役や女性役員の最近の比率が示されたほか、(イ)CEOの選解任基準について「整備を検討中」とする企業が大幅に増加している現状が浮彫りにされている。
③では、その縮減が事業法人間等で進まず依然高い水準にあるとするとともに、(ア)政策保有株式につき有価証券報告書で保有の合理性の検証方法等の開示を求める開示府令改正案が意見募集中であること(11月2日付公表、意見募集は12月3日に締め切られた。2019年3月期から適用予定)、(イ)政策保有銘柄企業出身の社外取締役と社外監査役につき一部の議決権行使助言会社では独立性を有しないとみなす動きがあることを紹介している。
④については、独立監査人の監査報告書で「監査上の主要な検討事項」を記載する監査基準改訂がなされ、2021年3月期決算から適用開始となることなど、近時の諸施策を紹介。
⑤では、6月公表の金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告に基づく前掲11月2日付改正案での取組みを示すとともに、経営者による経営成績等の分析(MD&A)の開示等が一部の日本企業では物足らないとする指摘を紹介するなどした。
機関投資家の取組みとなる⑥では(ア)国内計104の機関投資家が個別の議決権行使結果を公表するに至ったこと(10月31日集計)、(イ)スチュワードシップ活動状況に関しては機関投資家ごとに記載内容の差異が大きいことを指摘するとともに、(ウ)金融庁サイトで公表する「スチュワードシップ・コードの受入れを表明した機関投資家のリスト」につき「個別の議決権行使結果・理由の公表の有無」「スチュワードシップ活動の報告や自己評価等の公表の有無」が把握できる公表項目を追加してはどうかとする提案もなされている。
企業年金に係る⑦では本年、新たに7基金がスチュワードシップ・コードの受入れを表明し、11月現在、計14基金に上ることが明らかにされた。