日本経済再生本部、「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組の支援について」を公表
―― 一体的開示の記載例等を紹介 ――
日本経済再生本部(本部長=安倍晋三内閣総理大臣)は12月28日、「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組の支援について」を公表した。
政府では、日本経済再生本部において「未来投資戦略2017」(平成29年6月9日閣議決定)を策定し、「国際的に見て最も効果的かつ効率的な開示の実現及び株主総会日程・基準日の合理的な設定のための環境整備を目指す」などとしていた。これを受けて、金融庁と法務省は同年12月28日、金融商品取引法に基づく有価証券報告書と会社法に基づく事業報告・計算書類(事業報告等)との「一体的開示」をより行いやすくするため、「一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について」を取りまとめ、同年3月30日にはこれを踏まえた取組について公表しており、財務会計基準機構も同日、「有価証券報告書の開示に関する事項―『一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について』を踏まえた取組―」を公表していたところである(後掲の別稿参照)。
このように、「制度上は、会社法と金融商品取引法の両方の要請を満たす一つの書類を作成して、株主総会前に開示することは可能となっていることが示されて」おり、関係省庁においては、事業報告等と有価証券報告書の一体的開示を行おうとする企業の試行的取組を支援するための方策を、当該企業及び投資家とともに、検討してきたところである。この検討の中で、当該企業の試行的取組に基づいた記載例を作成し、「当該記載例は、今後、一体的開示を行おうとする企業が参考にできるものとして有益であると考えられるため、当該記載例を紹介」するとしており、関係省庁においては、今後とも「国際的に見て最も効果的かつ効率的な開示の実現」に向け、不断の検討を続けていくこととしている。
今回の記載例は、下記の2通りである。
- ① 有価証券報告書の項目と項目順ベースで事業報告等の記載内容を含む有価証券報告書を作成する
- ② 事業報告等を、これまでの構成を大きく変えず作成する
なお、今般の記載例は、「当該企業が、既に開示した自社の事業報告等と有価証券報告書に基づいて、事業報告等と有価証券報告書の記載内容の共通事項、有価証券報告書においてのみ記載している事項、事業報告等においてのみ記載している事項の整理を行った上で試行的に作成した一体的開示書類をもとに、関係省庁において、汎用的になるよう当該企業の個別情報を除いたもの」であるとされている。
以下、概要を紹介する。
「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組の支援について」
(平成30年12月28日、内閣官房・金融庁・法務省・経済産業省)
1 はじめに(略)
2 一体的開示の記載例と作成趣旨等
- 《記載例1》
- ○ 有価証券報告書の項目と項目順ベースで事業報告等の記載内容を含む有価証券報告書(以下「一体書類」)を作成する。(株主総会提出の事業報告等としても、有価証券報告書としても、使用可能)
- ○ 会社法上の株主総会招集通知発送期限までに開示する。
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○ なお、会社法上の株主総会招集通知発送期限までに、一体書類のうち、有価証券報告書の一部事項の作業が完了できない場合は、株主総会前に当該一部事項を含まない書類を事業報告等として開示する。その後、有価証券報告書の全項目の記載内容を満たした上で、一体書類を有価証券報告書として開示することも考えられる。
- (作成趣旨、メリット等)
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○ 試行的取組を行った企業からは、以下の意見があった。
- ・ 事業報告等と有価証券報告書の非財務情報の記載の共通化が前提として必要。その場合、一体書類のページ数は、既存の有価証券報告書のページ数とそれほど変わらない。
- ・ 株主総会招集通知発送前までの作業負荷は増大するが、トータルの工数は削減されるため、一連の開示作業を1か月前倒しで完了することができる。
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○ 投資家からは、以下の意見があった。
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・ 株主総会前に一体書類が開示されることについて賛同する。
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・ 株主総会前に一体書類が開示されることについて賛同する。
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(参考)
【別紙1-1】一体書類項目対照表
【別紙1-2】一体書類開示例
【別紙1-3】一体書類開示例(参考資料)
【別紙1-4】一体書類作成スケジュール例
- 《記載例2》
- ○ 事業報告等を、これまでの構成を大きく変えずに作成して、株主総会招集通知発送期限までに開示する。
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○(株主総会後)有価証券報告書の全項目の記載内容を追加して一体書類を作成し、有価証券報告書として開示する。その際、事業報告等と有価証券報告書の作成プロセスや記載内容をできる限り共通化する。
- (作成趣旨、メリット等)
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○ 試行的取組を行った企業からは、以下の意見があった。
- ・ 事業報告等として株主への説明のしやすさを維持した上で議決権行使に資する情報の追加も含め構成等の工夫が可能となる余地が大きい。ただし、一体書類として開示する際には、有価証券報告書の項目順に組替が必要となる。
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・ 重複する開示項目については、作成段階から一体的開示を意識することで、効率的な作成が可能になる。
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(参考)
【別紙2】事業報告等項目順ベースの開示例
なお、株主総会前に株主に対して提供する記載例2については、株主総会前に提供することが有用な情報が、これらの記載例の項目及び内容に限定されるわけではなく、企業と投資家との間で、株主総会における議決権行使に資する情報について対話し、その結果に応じて適切な情報を追加等することも考えられる。
3 おわりに
(略)今後については、企業における積極的な取組が期待されるが、その際、ディスクロージャーを支援する企業との連携も重要と考えられることから、関係省庁においても、このような企業の取組・連携の動きを支援していく必要がある。また、企業からの問い合わせに対しては、既存の窓口等を活用し、対応する。
この他、今般の検討を通じて、関係省庁に対し、企業からは今後とも一体的開示を容易にするため、開示に係るシステムの高度化等の重要性が指摘され、投資家からは投資判断に資する開示の充実や開示情報の比較可能性の重要性が指摘された。関係省庁においては、今般の検討会の指摘等も踏まえ、今後とも「国際的に見て最も効果的かつ効率的な開示の実現」に向け、不断の検討を続けることとする。
なお、金融庁において、金融審議会報告を踏まえた企業内容等の開示に関する内閣府令の改正が行われ、法務省(法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会)においては、株主総会資料の電子提供制度についての議論が行われているところである。企業においては、実際の開示に当たっては、このような改正の内容に沿った記載が必要なことに留意する必要がある。
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日本経済再生本部、事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組の支援について(12月28日)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/#other -
○ 事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組の支援について
https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/01/shien_hontai.pdf
別紙1-1「一体書類項目対照表」
https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/01/shien1-1.pdf
別紙1-2「一体書類開示例」
https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/01/shien1-2.pdf
別紙1-3「一体書類開示例(参考資料)」
https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/01/shien1-3.pdf
別紙1-4「一体書類作成スケジュール例」
https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/01/shien1-4.pdf
別紙2「事業報告等項目順ベースの開示例」
https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/01/shien2.pdf -
○ 事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組について(本体)
https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/01/torikumi_hontai.pdf -
経産省、「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組の支援について」を公表します(12月28日)
http://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181228006/20181228006.html -
参考
SH1583 金融庁・法務省、事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための環境整備に向けた対応を公表(2018/01/15)
https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=5233598
SH1757 金融庁と法務省、「一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について」を踏まえた取組について公表(2018/04/09)
https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=5857668