改訂ガバナンス・コードへの最新の対応状況が明らかに
――改訂・新設原則の影響、全原則コンプライ率は11ポイント低下――
金融庁および株式会社東京証券取引所が事務局を務める「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(座長・池尾和人立正大学教授)の第17回会合が1月28日、「改訂コーポレートガバナンス・コードに基づく企業の取組み」を議題として開催された。東証が作成した会議資料「改訂コーポレートガバナンス・コードへの対応状況(2018年12月末日時点)速報版」(以下「対応状況(速報版)という)からは、前回調査が公表された2017年7月時点と比較可能な上場会社の対応状況が明らかになっている。
対応状況(速報版)での取りまとめの主な対象は市場第一部で2,128社(前回調査時点は2,021社、今回調査時点において107社増。以下同様に示す)、市場第二部で493社(519社、26社減)の計2,621社(計2,540社、81社増)。これらの会社では現在、コーポレートガバナンス・コードにおいて基本原則:5原則、原則:31原則、補充原則42原則で構成される全78原則に対して「コンプライ・オア・エクスプレイン」(コードが法的拘束力を有する規範ではないことから、原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明する)の手法により、コードへの対応状況を表明することが求められている。
対応状況(速報版)によると、市場第一部・第二部の計2,621社のうち(ア)全78原則をコンプライしている会社は392社(15.0%)、(イ)90%以上をコンプライしている会社は1,721社(65.7%)、(ウ)90%未満にとどまる会社は508社(19.4%)であった。前回調査時点2,540社の内訳は(ア)全73原則をコンプライ:659社(25.9%)、(イ)90%以上:1,599社(63.0%)、(ウ)90%未満:282社(11.1%)であったため、前回調査との比較では(ア)全原則をコンプライ:267社減(10.9ポイント減)、(イ)90%以上:122社増(2.7ポイント増)、(ウ)90%未満:226社増(8.3ポイント増)となっており、コンプライ率は全体として低下している様子が窺える。東証によると「改訂・新設された原則の影響」とされている。
対応状況(速報版)から「改訂・新設された原則のコンプライ状況」により、コンプライ率の低い原則をみると(以下、市場第一部・第二部合計の割合を示す)、(1)独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名委員会・報酬委員会など独立した諮問委員会の設置(補充原則4−10①):48.3%・前回調査比28.4ポイント減(以下同様)、(2)経営陣の報酬の客観性・透明性ある手続に従った報酬制度の設計及び具体的な報酬額の決定(補充原則4-2①):66.0%・4.9ポイント減、(3)経営責任者等の後継者計画の策定・運用への関与、後継者候補の計画的な育成の監督(補充原則4−1③):68.6%・18.0ポイント減、(4)ジェンダーや国際性の面を含む多様性と適正規模が両立された取締役会の構成、適切な経験・能力及び必要な財務・会計・法務に関する知識を有する者の監査役への選任(原則4−11):68.9%・27.6ポイント減、(5)資本コストの的確な把握、事業ポートフォリオの見直し(原則5-2):79.8%・10.9ポイント減などとなる。(1)の諮問委員会を設置していない会社のうち、検討中としている会社は約3割にのぼるという。
前回調査時点では存在しなかった新設の原則のみに着目した場合、コンプライ率が90%未満となるのは(1)客観性・適時性・透明性ある手続に従ったCEOの選任(補充原則4-3②):83.2%、(2)その機能を十分発揮していないと認められる場合にCEOを解任するための客観性・適時性・透明性ある手続の確立(補充原則4-3③):85.8%。逆に、新設された原則ながら、政策保有株主との取引の合理性確保(補充原則1-4②)、取引の縮減を示唆することなどによる政策保有株式売却の阻害の禁止(補充原則1-4①)はともに99%超の高いコンプライ率を示しているほか、企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮に向けた母体企業による支援及び利益相反管理(原則2-6)も95%を超えている。