◇SH2537◇企業活力を生む経営管理システム―高い生産性と高い自己浄化能力を共に実現する―(第30回) 齋藤憲道(2019/05/16)

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企業活力を生む経営管理システム

―高い生産性と高い自己浄化能力を共に実現する―

同志社大学法学部
企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

3.「製品規格」の仕組みが業法・有害物質規制・表示規制等の遵守に有効

例3 電気製品(電気用品安全法)

  1.   電気分野では、ISO/IEC規格を参照して各国の安全規格が定められている。
  2.   日本では、電気用品安全法が、電気用品を製造・輸入する者に対して、①経済産業大臣に事業届出(下記(注1))を行い、②技術上の基準(電気用品の技術上の基準を定める省令)に適合させ、自主検査(特定電気用品の場合は下記(注2))を行って検査記録を作成・保存する義務を課している[1]

    1. (注1) 電気用品の製造・輸入を行う事業者(個人、法人)は、電気用品の区分毎に事業開始の日から30日以内に、名前(社名)・住所・工場(輸入の場合はメーカー名等)・電気用品の型式(構造・材質・性能等の要素による定義)等を「電気用品製造(又は輸入)事業届出書」に記して経済産業大臣(実務は、経済産業局長)に届け出なければならない[2]
    2. (注2) 構造・使用の状況から危険・傷害の可能性が大きい特定電気用品(電線・コンセント等116品目。20119年2月時点)については、販売までに登録検査機関の技術基準適合性検査を受け、適合性証明書の交付を受けて保存する[3]
  3.   国が定めた技術基準[4]に適合する旨の「PSEマーク[5]」・事業者名・定格電圧・定格消費電力等[6]の表示がない製品を販売することは許されない。ただし、家庭用品品質表示法の対象になる家庭電気機械器具[7]の表示については同法に従う。
  4.   JIS「製品規格」と比べると、①事業(製造・輸入)開始から30日内に届け出て(電気用品安全法上は、30日以内の無届営業が可能)、②基本的に製品試験を自主的に行って記録を残せばよい(ただし、特定電気用品は上記(注2)による。)、という点で相対的に緩やかな規格である。
  5.   一般の電気製品の性能と安全性は、一義的に、製造業者と輸入業者が自主的に行う仕組みによって確保される。これと、消費者・行政が行う製品の不具合・欠陥情報の共有化や製品評価対策等が相まって、健全な市場が形成されている。

    1. (注)「自己責任原則」の政府スローガンの下で1995年に大半の家電製品が強制認証品目(甲種電気用品)から自己認証品目(乙種電気用品)に移行(乙種電気製品に表示されていたマークは廃止)した際に、これらの製品の安全性を確保する目的で1994年12月に多くの電気関係の業界団体が参加する電気製品認証協議会(SCEA)が設立され、1995年から第三者認証制度(Sマーク)[8]が運用された。Sマークは、電気用品安全法の技術基準を認証基準とし、同法以外の製品についてはJIS/IEC等の基準を採用する。第三者認証機関では「製品試験」と「工場の品質管理調査」を行って認証する。Sマークは、事業者の自己確認を補完する役割を果たしている。
  6.   行政の取り組みには、次のようなものがある。

    1. ① 危険等防止命令
    2.   経済産業大臣は、商品による危険・障害の拡大を防止するために特に必要と認める場合は、危険等防止命令を発する[9]
    3. ② 長期使用製品の安全の確保
    4.   商品が経年劣化して安全上の支障が生じ、特に重大な危害を及ぼす恐れの多い品目(法定のガス・石油・電気器具)について、「長期使用製品安全表示制度」又は「長期使用製品安全点検制度」を適用する[10]
    5. ③ 重大製品事故の公表
    6.   製品起因が疑われる重大製品事故(死亡、治療30日以上の負傷等、一酸化炭素中毒、火災発生)については、消費者庁長官が直ちに事業者名・機種名・事故内容等を公表する[11]
    7. ④ 経済産業省が行う試買テスト
    8.   経済産業省(主務官庁)は、製品事故の未然防止・再発防止を図るため、毎年、市販で電気用品安全法の規制対象品を試買し、技術基準の適合性・表示の妥当性をテストして、その結果を公表する[12]。必要な場合は、事業者を指導等する。


[1] 電気用品安全法3条、8条

[2] 電気用品安全法3条。同法施行規則の(別表第一)に電気用品の20区分、(別表第二)に電気用品名・型式区分が、示されている。(別表第一)の各区分の事業を開始するときは、その都度、製造事業者(又は輸入事業者)毎に「電気用品製造事業届出書(又は、電気用品輸入事業届出書)」を経済産業大臣(実務は、工場・事業場所在地の経済産業局長)に提出する。この届出書の記載事項に変更が生じた場合(社名・工場名の変更、電気用品の型式区分の変更等)は、「事業届出事項変更届書」を提出する。(電気用品安全法3条、5条。同法施行規則6条、45条)

[3] 電気用品安全法9条

[4] 電気用品の技術上の基準を定める省令。〔省令が定める主な技術上の基準〕(1)一般要求事項(安全原則、安全機能を有する設計、供用期間中における安全機能の維持、使用者・使用場所を考慮した安全設計、耐熱性等を有する部品及び材料の使用)、(2)危険源に対する保護(感電に対する保護、絶縁性能の保持、火災の危険源からの保護、火傷の防止、機械的危険源による危害の防止、化学的危険源による危害又は損傷の防止、電気用品から発せられる電磁波による危害の防止、使用方法を考慮した安全設計、始動・再始動・停止による危害の防止、保護協調及び組合せ、電磁的妨害に対する耐性)、(3)雑音の強さ(放送受信及び電気通信の機能に障害を及ぼす雑音を発生するおそれがない)、(4)表示(安全上必要な情報及び使用上の注意、長期使用製品安全表示制度による表示)

[5] 電気用品安全法10条1項・2項、27条1項、28条1項

[6] 具体的には、技術基準省令19条及び技術基準省令解釈の製品毎の「別表」の「附表」に規定されている。なお、家庭用品品質表示法に基づく製品表示規定がある場合は、その規定が優先して適用される。(電気用品の技術上の基準を定める省令19条)

[7] 家庭用品品質表示法施行令は、エアコン・TV・台所用電熱用品・冷蔵庫・換気扇・洗濯機等の12品目を挙げている(別表 三電気機械器具)。なお、17品目(左記12品目。このうち、台所用電熱用品がジャー炊飯器・電子レンジ・電気ポット等の6品目に細分化されている。)について「電気機械器具品質表示規程」が詳細を定めている。

[8] (一財)電気安全環境研究所、(一財)日本品質保証機構、㈱UL Japan、TÜV Rheinland Japan㈱がこの第三者機関として、日本の電気製品の安全認証制度を支えている。

[9] 電気用品安全法42条の5

[10] 長期使用製品安全表示制度は「電気用品安全法」に基づく「電気用品の技術上の基準を定める省令」、長期使用製品安全点検制度は「消費生活用製品安全法」によって規定されている。

[11] 消費生活用製品安全法36条1項、56条

[12] 2017年度(平成29年度)の試買テスト結果(2019年2月公表): テストを行った87品目・257機種中、技術基準は103機種(40.1%)、PSE表示基準は18機種(7.0%)が適合しないことが確認された。不適合事案については、経済産業省・経済産業局等が届出事業者にその内容を通知し、是正のための改善指導を行っている。不適合事案のうち2件はリコールを行った。

 

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