インド:新たな会社設立手続システムSPICe+の運用開始
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 松 本 岳 人
インド企業省(Ministry of Corporate Affairs)では会社登記手続の電子化が進められており、これまで2016年から導入されているSPICe(Simplified Proforma for Incorporating Company Electronically)と呼ばれるウェブシステムにおいて会社設立については電子申請で行われていた。今般、SPICeをアップデートした新システムSPICe+(プラス)の運用が2020年2月より開始されたことから、本稿では新しいシステムの下での会社設立手続について紹介する。
インドにおいて会社を設立するには、まず取締役候補において電子証明認証(Digital Signature Certificate:DSC)及び取締役認識番号(Director Identification Number:DIN)の取得が必要になる。その上で、発起人においてインド企業省の商号予約ウェブサイト(Reserve Unique Name:RUN)上で、会社の商号の承認を得て、従来はSPICeのシステムにおいて会社設立申請フォームに必要事項を記載し、基本定款及び付属定款等の必要書類を添付して、申請することで会社を設立することができた。もっとも、会社の設立後には会社の納税者番号(Permanent Account Number:PAN)、源泉徴収者番号(Tax Deduction and Collection Account Number:TAN)及び物品・サービス税登録番号(Goods and Service Tax Identification Number:GSTIN)の取得や、従業員州保険公社(Employees’ State Insurance Corporation:ESIC)及び従業員積立基金公社(Employees’ Provident Fund Organization:EPFO)への登録といった手続がそれぞれ関連当局において必要となる。これらの会社設立後の手続について、従来SPICeシステムとは別のシステムであったことから、発起人としてはそれぞれ別々に申請をする必要があった。
新しいSPICe+のシステムでは、会社設立に関連する複数の手続をワンストップで実現できるよう、システムが統合され、会社設立後の手続もSPICe+のシステム上で一括して進められるようになった(なお、会社設立時の商号予約については、SPICe+のシステムで実施することができるが、商号の変更についての手続は引き続きRUNのシステムにおいて実施することとされている)。また、SPICe+のシステムを通じて、会社の銀行口座の開設手続もできることとされている。
SPICe+ではウェブサイトの操作性も改善され、インドでの会社設立手続が容易になるとともに、会社設立後に登録した事項を変更する手続もSPICe+のシステムで行うことができ、システムの利便性が向上し、ビジネス環境の改善が期待される。
以上