☆ベトナム:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報) 澤山啓伍(2020/04/03)

2020年4月2日号
ベトナム:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 澤 山 啓 伍

はじめに

 4月1日に発表された日銀短観が7年ぶりにマイナスに転じるなど、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動への影響が深刻化しています。また、諸外国における移動制限や事業所閉鎖の拡大に伴い、海外に子会社・関係会社を抱える企業からの問い合わせも増えているため、速報ベースで各国の方針や影響拡大状況の概要につきお知らせ致します。なお、本記事は感染拡大が続く間、不定期に配信していきたいと思いますが、同感染症の拡大状況については日々状況が変化している中、本記事の内容がその後変更・更新されている可能性については十分ご留意の上参照ください。本記事の内容は、特段記載のない限り、日本時間2020年4月1日夜時点で判明している情報に基づいています。

 

全体概況  死亡者:0人、感染者数:212人(4月1日現在)

 ベトナムでは、当初から警戒を強め初期の抑え込みには成功していたが、近時感染者が増加している。そのほとんどは欧米からの帰国者であるが、帰国者との濃厚接触者の感染も少しずつ増えている。ベトナム政府は4月1日から15日間、全土での「社会隔離」の実施を指示し、全ての国民に自宅待機を求めている。

 

主な政府発表

  1. ・ 首相は、新型コロナウイルス感染症を「全国流行病」と宣言することに同意した。これにより、感染防止法に基づき全国規模で飲食施設の運営停止や流行地域へのアクセスの制限等の措置をとることが可能になる。
  2. ・ 4月1日から15日間、全土での「社会隔離」の実施を指示する首相指令第16/CT-TTg号を公布。全ての国民は自宅で待機し、(a)食料、食品、薬品の調達や救急の目的、(b)必需品、必需サービスを生産・提供する企業・工場で働く目的、及び(c)その他の緊急の場合等、本当に必要な場合に限って外出するよう求めるとともに、他人と接触する際には2メートル以上の間隔を保ち、会社・学校・病院、及び公共の場所以外において3人以上で集まらないことを求めている。首相指令の文面からすると、「必需品、必需サービスを生産・提供する企業・工場」以外は事業を停止することを求められているように読めるが、報道によれば、ズン官房長官は「国営企業以外の民間企業については、防疫対策を適応のうえ、引き続き社員に出勤をさせるか否かを自ら決めて良い」と述べたとのことである[1]。日系企業の工場では、この指令を受けて防疫対策の強化のため操業を一時停止しているところもあれば、操業を継続しているところもあるようである。
  3. ・ 首相指令第16/CT-TTg号には、一部例外を除く公共交通手段による旅客運搬の停止も含まれている。これに基づき、各地で路線バス、タクシー等の運行停止、国内航空便、南北鉄道の大幅減便が行われている。

 

渡航情報

  1. ・ 2020年3月22日以降、全ての外国人の入国を原則停止した(政府官房通知第118/TB-VPCP号)。
  2. ・ 4月1日から同15日までの間、外交目的等で必要な場合を除き、ベトナム発着の全国際旅客便の運行を停止する他、国内線もハノイ、ホーチミン、ダナンの三都市を発着する数便の他は運航を停止する。
  3. ・ ベトナム航空は日本路線の全区間の運休を5月末まで延長した。日系航空会社も日越間の航空便を運休又は減便している。

 

その他

  1. ・「社会隔離」が開始された4月1日朝のハノイ市内での通勤時間帯の交通量は、皆無ではないものの、感覚的には「社会隔離」開始前(すでに外出自粛要請はされていた)の、さらに1/3程度まで減少している様子である。
  2. ・ 最高人民裁判所は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止策の妨げとなる行為に対して適用すべき刑法上の罪名を公表した。これによると、感染者が隔離場所から逃走するなどして他人に感染させた場合には「危険な病気を他人に感染させる罪(刑法240条)」が、サービス業の経営者が営業停止命令に違反して1億ドン以上の感染対策費用を発生させた場合には「人混みでの安全規定に違反する罪(同295条)」が、ネット上でのデマ情報の流布には「ネット虚偽情報流布罪(同288条)」が、当局が価格安定品目として指定した商品の買い占め行為には「投機罪(同196条)」が適用されるとのことである。これらにより、罰金のみならず懲役刑が科される可能性がある。

 

 

(さわやま・けいご)

2004年 東京大学法学部卒業。 2005年 弁護士登録(第一東京弁護士会)。 2011年 Harvard Law School卒業(LL.M.)。 2011年~2014年3月 アレンズ法律事務所ハノイオフィスに出向。 2014年5月~2015年3月 長島・大野・常松法律事務所 シンガポール・オフィス勤務 2015年4月~ 長島・大野・常松法律事務所ハノイ・オフィス代表。

現在はベトナム・ハノイを拠点とし、ベトナム・フィリピンを中心とする東南アジア各国への日系企業の事業進出や現地企業の買収、既進出企業の現地でのオペレーションに伴う法務アドバイスを行っている。

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

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