インドネシア:投資窓口の一元化(ワンストップサービス)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 前 川 陽 一
インドネシア投資調整庁(BKPM)は、2015年1月26日、これまで各政府機関に分散していた投資許認可関連手続に関わる窓口を投資調整庁内に集約するワンストップサービスセンターを開設したと発表した。昨年10月に発足したジョコ・ウィドド(ジョコウィ)政権は、複雑化した投資許認可関連手続の簡素化による投資活動の促進を公約に掲げており、ワンストップサービスセンターの開設はジョコウィ政権の目玉政策の一つであった。ジョコウィ大統領は、就任後初めての視察先の官庁として投資調整庁を選び、ワンストップサービスセンターの開設にあわせて開かれた式典に自ら出席するなど、インドネシアへの投資の活性化に向け並々ならぬ意欲を燃やしている。
投資許認可関連手続を投資調整庁の下に統合しようとする動きは前政権の時代から志向されてきた政策ではある。今回、投資調整庁内に新たに設置されたワンストップサービスセンターの目新しさは、22の政府機関から担当官を投資調整庁に派遣して、その事務を支援させることとした点にある。すなわち、投資調整庁本館1階では、各政府機関から派遣された担当官がそれぞれの窓口で各種申請事務を受け付けており、企業担当者はその場で関係機関の担当官に相談することもできるようになっている(ただし、石油・ガス関連及び金融関連の許認可については対象外。)。さらに同館5階には各政府機関のバックオフィス機能が収容され、1階の窓口業務との連携が図られている。手続のオンライン化もあわせて推進されている。企業担当者は、申請手続の進行状況を投資調整庁のウェブページから確認することができるようになった。将来的には、2016年までに、投資許認可に関連した地方自治体の権限をも投資調整庁へ統合することを目指しているとのことである。
ワンストップサービスセンターは、投資調整庁と他の政府機関の機能を物理的に統合する解決策であるところ、単純でありながらもその効果は大きいと思われる。インドネシアへの投資に関連した海外投資家からの不満として、投資許認可取得までに長期間を要することや、相談しても担当官ごとに回答が異なる場合があることなどがよく挙げられるが、ワンストップサービスセンターが効率的に機能すれば、申請事務や相談のために企業担当者は異なる関係機関の間を往復する必要はなくなるし、窓口の一元化は統一的な見解の形成に資するはずである。
ワンストップサービスセンターの開設は、ジョコウィ政権が掲げる行政改革の具体化の一つとして投資家に好印象を与えている。もっとも、投資許認可関連手続の一層の簡素化に向け、手続期間のさらなる短縮、申請書類の簡略化、基準の透明性の向上、許認可間での重複の解消など残された課題は少なくない。ジョコウィ政権には、インドネシアの投資環境の整備に向け、引き続き指導力を発揮していくことが強く期待される。
以上