ミャンマー:ミャンマー投資委員会による新通達の公表
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 山 本 匡
1.ミャンマーの外資規制
ミャンマーにおいては、多くの開発途上国において見られるような、包括的・一元的に外国投資を広く規制・禁止する法律・法制度が存在しない。しかしながら、このことは、外国企業が自由に制限なくミャンマーに対して投資を行うことができることを意味するものではない。一定の業種については、1989年国営企業法(State-owned Economic Enterprises Law, 1989)により、国営事業とされ、外国企業を含む民間企業は、原則として当該事業を行うことが禁止される(外国企業でなくとも原則として行うことが禁止されるので、外資規制そのものではない。なお、政府の許可を得て行うことはあり得る。)。
また、外資規制そのものではないものの、例えば、1914年会社法(Companies Act, 1914)により営業が許可される事業範囲に制約があったり、1987年不動産譲渡制限法(Transfer of Immovable Property Restriction Act, 1987)による規制により、長期にわたって不動産利用を必要とする場合の制約がある等、これらの法律等も、外国投資への制約として働く。
加えて、外国投資を規制することを目的とする法律ではないが、外国投資規制に関連するもっとも重要な法律の1つとして、1988年外国投資法(Union of Myanmar Foreign Investment Law, 1988)に代わるものとして施行された2012年外国投資法(Foreign Investment Law, 2012)がある。同法上、ミャンマー投資委員会(Myanmar Investment Commission)(通称MIC)の許可を取得した外国投資家に対して、税制上その他の様々な優遇措置が与えられており、同法は、ミャンマーへの外国投資を促進するために制定された法律である。ただし、同法並びに同法に基づくミャンマー国家計画・経済開発相の定めた規則(Notification No. 11/2013)及びMICの通達(Notification No. 49/2014)(2014年通達第49号)により、投資承認が規制される事業と、その規制内容や参入要件等が定められており、実質的には外資規制としての側面も有するといえる。
2.ミャンマー投資委員会の通達
MICは、2014年8月に外国投資に関して3つの重要な通達(Notification 49/2014、50/2014及び51/2014)を公表した。
①Notification 49/2014(2014年通達第49号)
2014年通達第49号は、従前のMICの通達(Notification No. 1/2013)(2013年通達第1号)を改正するものである。通達第49号では、(a)外国投資家が行うことができない事業、(b)外国投資家がミャンマー人と合弁でのみ行うことができる事業、(c)外国企業が担当省庁からの推薦を得て、ミャンマー人との合弁でのみ行うことができる事業、及び(d)その他の規制に従い合弁により行うことができる事業が定められている。そして、これらに該当しない事業については、100%外国投資ができることとされている。
2014年通達第49号により、2013年通達第1号に比べて規制業種が大幅に整理された中で、特に注目される改正として、小売業や卸売業等の規制対象からの除外がある。これらの事業に対する参入規制緩和とも思われるものの、実際に自由に100%まで外国投資が認められるのか現段階では不明確なところがあり、今後の動向を注視する必要がある。
②Notification 50/2014(2014年通達第50号)
2014年通達第50号では、環境アセスメントが必要な業種が定められている。従来、2013年通達第1号において環境アセスメントが必要な業種が定められていたが、これが2014年通達第49号から除外され、内容が見直された上、2014年通達第50号として定められた。
③Notification 51/2014(2014年通達第51号)
2014年通達第51号により、優遇税制の適用範囲が縮小された。すなわち、自動車の修理や車両・機器のリース等の9業種について、関税及び商業税が減免されないこととなった。この通達に遡及効はなく、2014年8月19日(2014年通達第51号の公表日)以降にMICが許可した投資について、減免が適用されない。