◇SH0227◇銀行員30年、弁護士20年 第5回「弁護士は生涯現役で仕事ができるか」 浜中善彦(2015/02/24)

法学教育そのほか未分類

銀行員30年、弁護士20年

第5回 弁護士は生涯現役で仕事ができるか

 

弁護士 浜 中 善 彦

 サラリーマンには定年があるが、弁護士にはそれはない。その点は、サラリーマンから見ると羨ましいことである。確かに、弁護士資格に定年はない。しかし、そのことは、いつまでも仕事があるということではない。弁護士は経験を積めばそれだけ仕事の依頼も増え、仕事ができるとは限らない。とりわけ、昨今のように法律もしょっちゅう変わり、実務も変化する時代には、資格や経験だけで仕事はできない。資格があることと生涯現役とは同義ではない。

 たとえば、企業法務に関していえば、会社法や労働法関係だけでもめまぐるしい変化である。それだけではない。ビジネス環境の変化によって、外資とのM&Aなど、かつては考えられなかったような問題が日常的に発生するようになっている。
 私の主たる業務範囲は、会社法、労働法(使用者側)と金融関連法であるが、それらに関する法改正についていくだけでも大変である。正直なところ、それらの改正全部については、到底カバーできていない。金融関連法と書いたが、金融関係でもごく限られた部分だけしか自信がない。金融商品取引法に至っては、全く素人である。このように、不断の努力を継続しない限り、クライアントの信頼も維持できないし、仕事も任せてもらえない。経験だけで仕事ができる時代ではなくなっている。

 また、IT技術の高度化によって、情報交換の方法も大きく変化してきている。顧問先からの照会は、ほとんどすべてメールである。それに対して、手書きの回答を秘書にタイピングさせて回答するようなことでは、ビジネス弁護士としては失格であろう。
 というのは、ビジネスもこれまで以上にスピードが要求されるようになってきており、弁護士が自分の都合に合わせて仕事をしたり、回答したりという時代ではない。私は複数の法人と顧問契約があり、いろんな質問がくるが、質問を受けたらその日に回答することを原則にしている。原則と書いたのは、外出先から午後5時過ぎに帰ったらメールが来ていたという場合には、5時以降は特別なことがない限り仕事はしないことにしているので、その日には回答しないからである。そのかわり、翌日早めに起きて、担当者が出勤したら回答のメールが見られるようにしている。ビジネスの現場では、弁護士からみると急ぎの用ではないような場合でも、担当者はそれだけにかかわっているのではないので、一刻でも早い回答がほしいのである。

 そういったことができるためには、単に法律知識や経験だけではなく、情報技術の進歩に遅れを取らないようワープロやメールを使いこなすことができなければならない。
 今後、PCと英語は、企業法務を専門にする弁護士にとっては必須のツールと知識になると思われる。

以上

 

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