内閣府、コーポレート・ガバナンスに関する報告書における「女性の活躍」の記載状況を公表
岩田合同法律事務所
弁護士 鈴 木 正 人
内閣府は、2015年4月6日、コーポレート・ガバナンスに関する報告書(以下「CG報告書」という。)における「女性の活躍」の記載状況を公表した(以下「本公表」という。)。
東証は、2013年4月、上場企業が女性の役員登用をはじめとする活躍状況を積極的に開示するよう、CG報告書の記載要領の改訂を行い、役員等の男女別の構成や、役員への女性登用の状況に関する現状を記載することが考えられる旨が記載要領に追加されるとともに、各企業による積極的な開示を要請した。
本公表は、2014年のCG報告書(以下「本件CG報告」という。)を開示した上場企業3523社における「女性の活躍」の記載状況を分析したものであり、2015年のCG報告書作成に当たり参考となる。そこで、以下、本公表の内容を概説する。
まず、本件CG報告で「女性の活躍」を記載した企業の割合は20.1%(3523社中の708社)であり、前年の17.4%に比べて開示事例が増加している。また、本件CG報告の「女性の活躍」に関する項目別の記載割合では、「女性の活躍」を記載した企業708社中の約7割に当たる520社が女性役員の有無(グループ企業を含む)について記載をしていた。さらに、仕事と育児の両立支援やワーク・ライフ・バランスについては、同708社中の半数近くの企業が記載していた。女性役員の有無(グループ企業を含む)を記載した企業520社中の約4割(201社)、上場企業単体における女性取締役の有無について記載した企業437社中の約5割(224社)は、役員・取締役に女性がいないことが記載されていた。
「女性の活躍」記載企業の割合(連結売上高別)では、売上高が大きいほど「女性の活躍」を記載している企業の割合が高くなっており、1兆円以上では、記載している企業の割合が6割を超えていた(下記図表参照)。「女性の活躍」記載企業の割合(業種別)では、「銀行」では約3分の2(91社中の61社)の企業が、「電力・ガス」では5割(23社中の12社)以上の企業が、「金融(除く銀行)」では3分の1(85社中の29社)以上の企業が、「女性の活躍」に関して記載をしている。これらの3業種以外では、記載企業の割合は10~20%台となっており、記載企業の割合が目立って低い業種は見られない。
女性の活躍に関する情報は、財務情報に現れない企業の「見えない価値」の一つであり、企業が女性の活躍状況を開示することによって、存続可能性や中長期的な成長性が投資家から適切に判断され、資金調達などにおいてメリットを得ることができるようになると考えられている。そこで、上場会社は本公表の内容を参考に2015年CG報告書において「女性の活躍」に関する記載の有無、記載内容を検討し、開示の方針や内容を決めることが考えられよう。
(すずき・まさと)
岩田合同法律事務所パートナー。2000年東京大学法学部卒業。2002年弁護士登録。2010年ニューヨーク州弁護士登録。2010年4月から2011年12月まで金融庁・証券取引等監視委員会事務局に在籍。『FTACA対応の実務』(共著、中央経済社、2012年)、『Q&Aインターネットバンキング』(共編著 金融財政事情研究会、2014年)等著作多数。
<事務所概要>
1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。
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