中国:中国大陸・香港ファンド相互承認制度の開始
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 德地屋 圭 治
2015年5月22日、中国証券監督管理委員会と香港証券先物事務監察委員会とは、中国大陸・香港ファンド相互承認制度の実施に関する原則、相互承認の方式及び実務に関し、覚書を締結するとともに、それぞれ関連の規定を公布した。
1 中国大陸・香港ファンド相互承認制度の意義
中国大陸・香港ファンド相互承認制度とは、中国大陸及び香港のいずれか一方の地域で設定されたファンドを他方の地域で販売することを可能とする制度である。
中国大陸資本市場については、香港市場を通じた対外開放が徐々に進んでいる。2014年には、所謂上海・香港ストックコネクトが開始されたが、これは、香港及び海外投資家による香港聯合取引所を通じた上海証券取引所上場株式の売買を可能とするとともに、中国大陸投資家による上海証券取引所を通じた香港聯合取引所上場株式の売買を可能とする制度であるが、今回の中国大陸・香港ファンド相互承認制度は、上海・香港ストックコネクトの次のステップとして、中国大陸資本市場の対外開放を一歩進めるものである。
中国大陸・香港ファンド相互承認制度においては、中国大陸及び香港の一方の地域で設定されたファンドは、他方地域の規定に適合すれば、他方地域の当局において比較的簡易な承認手続をとることで、他方地域で販売することが可能となる。このような承認に関する規定は、中国大陸及び香港でそれぞれ定められているが、香港で設定されたファンドが中国大陸で承認を受ける条件及び手続については、中国証券監督管理委員会が制定した「香港相互承認ファンドの管理に関する暫定規定」に定められている。当該規定は2015年5月22日に公布され、7月1日に施行された。
2 承認対象となるファンドの条件(香港ファンドの大陸での承認の取得の場合)
「香港相互承認ファンドの管理に関する暫定規定」によれば、中国大陸での承認の対象となる香港ファンドは、以下の条件など同規定に定められた条件を満たす必要がある。
- ① 香港法に従って香港で設定され運営され、香港証券先物事務監察委員会から公開発行について承認を受け、同委員会の監督管理を受けていること
- ② 一般的な株式ファンド、債券ファンド、混合型ファンド及びインデックスファンドであること
- ③ ファンド設定後1年以上経過しており、資産規模が2億人民元又は他通貨でそれと等価の金額以上であること
- ④ 中国大陸が主要な投資先でなく、中国大陸での販売規模がファンド総資産に占める割合が50%以下であること
なお、相互承認制度により承認を受けることができる投資金額については、総額が設けられており、中国大陸ファンド及び香港ファンドそれぞれについて、3,000億人民元とされている。
以 上