ミャンマー:重要法案に関する近時の動向
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 山 本 匡
2015年11月に行われた議会総選挙において、スー・チー氏が率いる国民民主連盟(National League for Democracy)(NLD)が圧勝したものの、同氏の子供が外国国籍であるため、ミャンマー憲法の規定上、同氏は大統領就任資格を有しない。同規定の改正や執行停止等の方法により、同氏を大統領とすることが協議されているが、国軍の反対により、現実は厳しいようである。
外国投資家の観点からは、重要な法案がいくつか議会で承認されている。例えば、2016年1月に仲裁法(Arbitration Law)が承認された。ミャンマーは、2013年にいわゆるニューヨーク条約(外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約)に加盟している。同法の成立により、外国仲裁判断の執行について、法律面での基盤は整ったといえよう。同法の内容は、UNCITRALモデル法に則したものとなっている。
また、数年来懸案となっていたコンドミニアム法(Condominium Law)が承認され、外国人が一定の要件を満たすコンドミニアムの戸数の40%まで保有することができるようになる。ただし、対象となるコンドミニアムの範囲や、外国人の敷地に関する権利等、不明点も多い。
今後は、これらの新法が実際にどのように解釈・運用されるのかという、解釈・運用面を注視する必要がある。特に、仲裁法につき、実務的にはミャンマー国外での仲裁を紛争解決方法として合意することが多いであろうから、外国仲裁判断の執行について、どのような解釈・運用がなされるか注視したい。
以上に加えて、現在審議中の重要法案も目白押しである。中でも重要なものとして、約100年ぶりの抜本的改正となる会社法案、各種知的財産法案、並びに、現行の外国投資法(Foreign Investment Law)及び国内投資法(Myanmar Citizens Investment Law)を統合する投資法案等がある。ただし、これらはまだ内容が確定しておらず、承認・施行まで紆余曲折があり得る。
これらの中でも、商標法については、承認・施行されれば、商標登録申請ラッシュといった事態が生じることが予想される。現在、実務的に行われている登録法(Registration Act)及び関連指令に基づく商標の登録との関係や、不服申立て・審査制度、審査能力等の制度面・運用面の乗り越えなければならない問題が多いものの、JICA等からの支援を受けてミャンマー政府は問題解決に向けて精力的に取り組んでおり、今後の動向が注目される。