◇SH0833◇厚労省、『有期契約労働者の円滑な無期転換のためのハンドブック』を作成 大浦貴史(2016/10/11)

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厚労省、『有期契約労働者の円滑な無期転換のためのハンドブック』を作成

岩田合同法律事務所

弁護士 大 浦 貴 史

 厚労省は、平成28年9月30日、「有期契約労働者の円滑な無期転換のためのハンドブック」(以下「本件ハンドブック」という。)を公表した。

 平成28年5月17日付タイムライン徳丸大輔「厚労省、労働契約法に基づく「無期転換ルール」への対応を促すための支援策を公表(SH0661)」で紹介したとおり、厚労省は、今年度、有期契約労働者の無期転換制度の導入支援策として、「モデル就業規則」の作成や、先進的な取り組みを行っている企業事例の紹介などの施策を実施するとしていたが、本件ハンドブックは、当該支援策のひとつとして、無期転換の申込みが本格化する平成30年4月1日に向けて、事業主や企業の人事労務担当者向けに、無期転換ルールの導入手順やポイント、導入事例などをまとめたものである。

 本件ハンドブックは、大きく分けて①無期転換制度の説明(1頁~4頁)、②無期転換のメリットと意義(5頁)、③無期転換制度の導入の手順(6頁~10頁)、④支援策の紹介(11頁~12頁)、⑤他社事例の紹介(13頁~18頁)で構成されている。特筆すべきは②と⑤である。

 本件ハンドブックは、無期転換制度の導入の手順として、⑴有期社員の就労実態を調査する、⑵社内の仕事を整理し、社員区分ごとに任せる仕事を検討する、⑶適用する労働条件を検討し、就業規則を作成する、⑷運用と改善を行う、との手順を提案する。そのうち、⑵及び⑶に関連して、無期転換のための選択肢として、(a)単に雇用期間を無期へと変更する(処遇は特に変更しない)、(b)「多様な正社員」(勤務地や労働時間、職務などの労働条件に制約を設けた正社員)へと転換する、(c)「正社員」へと転換するという方法を提案する。

 また、本件ハンドブックは、個社事例として、(i)東都生活協同組合の事例、(ii)三井住友海上火災保険株式会社の事例、(iii)総合不動産業を営む会社の事例を紹介している。本稿では、そのうち(ii)三井住友海上火災保険株式会社の事例について紹介する。

 同社では、無期雇用社員が約1万5000人であるのに対し、1年更新の「スタッフ社員」が約5000人存在しているが、内務事務、コールセンターのオペレーター業務、損害査定業務など、保険会社の基盤となる業務を担っていた。そうした「スタッフ社員」の無期転換方法として、単に雇用期間を無期とするほかに、「地域社員(総合職)」(転勤は原則としてないが、部門間の異動は存在する社員。)と「アソシエイト社員(専任職)」(転勤も異動も原則としてない社員)への転換制度を設け、それぞれ一定の登用基準(選考要件、選考過程、上司の推薦要件等)を定めた上で、本人の応募→上司の推薦→人事部の選考→内定とのプロセスを経て無期転換を行うとの制度が採用されている。それぞれの職種の具体的な処遇・労働条件や、登用基準の具体的内容についても紹介されているので、参考になると思われる。

 無期転換の申込みが本格化する平成30年4月1日が近付く中、各社においては、単に無期転換制度を理解するだけではなく、無期転換制度の具体的な制度設計を行うことが必要な時期にきており、本ガイドラインは、その参考になるものと考えられることから、紹介した次第である。

 

 

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