公取委、「流通・取引慣行と競争政策の在り方に関する研究会報告書」を公表
――流通・取引慣行ガイドラインの見直しの方向性を示す――
公正取引委員会は、12月16日、「流通・取引慣行と競争政策の在り方に関する研究会」(座長=土井教之・関西学院大学名誉教授)の報告書を公表した。同研究会では、平成3年7月に制定した「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(以下、「ガイドライン」)について、制定から約25年を経た実態の変化に関する競争政策の観点からの評価と、ガイドラインの見直しの方向性について検討を行ったものである。公取委では、本報告書を踏まえてガイドラインの見直しを行うこととしている。
報告書をみると、「流通・取引慣行ガイドラインの見直しについて(総論)」では、まず、「最近の流通実態の変化」について検討している。
そこでは「Eコマースの発展・拡大」に関して、オンラインのプラットフォーム事業者の台頭は競争の状況等に大きな影響をもたらしたこと、オンライン取引に関連する垂直的制限行為については、欧米と比較すると日本では具体的な事例が少ないこと、今後も新たなビジネスモデルの出現により新たな競争上の問題点等も次々に生じてくると考えられること、等を指摘している。
「メーカーと流通業者の取引関係等の変化」に関しては、ガイドライン制定時に問題視された日本の市場の閉鎖性に係る問題はあまりみられなくなっていること、メーカーが流通業者の行為を一方的に制限することで流通を支配するという見方に立つのは一面的であるとしている。
また、「総代理店・並行輸入品の実態等」は変化してきており、さらに実態把握を行う必要があるとしている。
次に「流通・取引慣行ガイドラインの更なる明確化」については、最近の流通・取引慣行の実態を踏まえつつ、時代の変化にも対応し得るようなガイドラインとすることが望ましいこと、わかりやすさや利便性の向上という観点から3部構成自体も見直す必要があることとしている。
これらを踏まえて「流通・取引慣行ガイドラインの見直しの各論(具体化)」では、「構成の変更」について、同一の適法・違法性判断基準に基づき判断される行為類型を統合するなどして、現行の第2部を中心として再構築することが適当であるとしている。
「適法・違法性判断基準の更なる明確化」については、まず、「分析プロセスの明確化」として、多様化するビジネスモデルに対応することができるよう、「新規参入者や既存の競争者にとって代替的な流通経路を容易に確保することができなくなるおそれがある場合」(市場閉鎖効果)と「当該商品の価格が維持されるおそれがある場合」(価格維持効果)について、経済学的な考え方を踏まえつつ、内容のさらなる充実を図っていく必要があるとしている。
次に「オンライン取引に関連する垂直的制限行為について」では、分析プロセスの明確化にあたって、オンライン取引に関連する垂直的制限行為にも応用できるような汎用的な考え方を示すことが望ましいとしている。
この他、「原則違法となる行為類型の考え方の整理等」について、「安売り業者への販売禁止」および「価格に関する広告・表示制限」は、「通常、価格競争を阻害するおそれがあり、原則として違法」となるという、これまでの考え方を維持することが適当であるとしている。選択的流通は、世界的にも活発な議論が行われている論点であるため、具体的事例の蓄積等を踏まえつつ、引き続き検討を行っていくことが重要であるとしている。
「審判決例や相談事例の積極的な活用」については、これらを積極的に各行為類型の記載に盛り込んでいくべきであるとしている。
-
◯ 公取委、「流通・取引慣行と競争政策の在り方に関する研究会」報告書について(12月16日)
http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h28/dec/161216_1.html -
◯ 報告書概要
http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h28/dec/161216_1.files/besi.pdf -
◯ 報告書本文
http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h28/dec/161216_1.files/honbun.pdf -
◯ 報告書添付資料
http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h28/dec/161216_1.files/tenpu.pdf