実学・企業法務(第22回)
第1章 企業の一生
同志社大学法学部
企業法務教育スーパーバイザー
齋 藤 憲 道
(3) 物(モノ)
2) 車両・鉄道・船舶・航空機
企業は、車両・鉄道・船舶・航空機等の輸送機器を用いて事業を行うが、特に、人・貨物の運送を目的とする事業を行う場合は、輸送の安全・利用者の利益保護・事業の健全な発達・公共の福祉の増進等を目的として、それぞれの業法が制定されている。
これらの業法では、免許・許可・認可の条件、輸送機器の所有・運転・メンテナンス・事故対応の方法等が詳細に規定され、これに違反するとさまざまな制裁を受け、刑事罰を科される。
車両・鉄道・船舶・航空機を用いて行う人・貨物の運送業を規律する法律には次のようなものがある。
- 〔道路運送法〕 道路運送事業に関し、①旅客自動車運送事業(3~43条)[1]、②貨物自動車運送事業(具体的には、別途、貨物自動車運送事業法に定める)、③自動車道事業(47~77条)、について定める。
- 〔鉄道事業法〕 鉄道事業(3~31条)及び索道事業[2](32~38条)について定める。
- 〔海上運送法〕 船舶運行事業(3~32条)について定める。
- 〔航空法〕 航空運送事業(100~125条)について定める。
これらの事業を営むには、主務大臣の許可[3]等を受けなければならない。
なお、個々の企業が自家用に運用する車両(道路交通法、道路運送車両法)・鉄道車両(鉄道営業法、軌道法)・船舶(船舶職員及び小型船舶操縦者法、船舶安全法)・航空機(航空法)等については、それぞれの関係法令で運転免許・技能証明、機器の性能維持、管理方法等が定められている。
[1] 旅客自動車運送事業とは、a.一般旅客自動車運送事業(一般乗合旅客自動車運送事業、一般貸切旅客自動車運送事業、一般乗用旅客自動車運送事業)、及びb.特定旅客自動車運送事業をいう。(道路運送法2条、3条)
[2] ロープウェイ、リフト
[3] 道路運送法4条(自動車道事業は免許47条)、貨物自動車運送事業法3条、鉄道事業法3条、海上運送法3条、航空法100条(運航規程・整備規程・運送約款は認可)。