◇SH1092◇中国:民法総則 (1) 川合正倫(2017/04/03)

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中国民法総則 (1)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 川 合 正 倫

 中国の民法総則が2017年3月15日の全国人民代表大会(我が国の国会に相当)において制定された。中国では、これまで民法通則、契約法、物権法、権利侵害責任法等の個別法規に規定される内容を、2020年を目標に民法典に編纂する作業が2015年から進められており、民法総則の制定はこの第一弾に位置づけられるものである。民法総則の施行日は2017年10月1日とされている。

 現行の民法通則は(社会主義)市場経済体制の導入前の1986年に公布されたものであるところ、民法総則は約30年間の著しい社会情勢の変化に反映するものとしてその制定が待たれていた。

 民法総則は基本的に日本民法や中国民法通則と同様にパンデクテン方式が採用され11章206条からなり、その構成は以下のとおりである。
 

  第一章   基本規定   (第1条から第12条)

  第二章   自然人    (第13条から第56条)

  第三章   法人     (第57条から第101条)

  第四章   非法人組織  (第102条から第108条)

  第五章   民事権利   (第109条から第132条)

  第六章   民事法律行為 (第133条から第160条)

  第七章   代理     (第161条から第175条)

  第八章   民事責任   (第176条から第187条)

  第九章   訴訟時効   (第188条から第199条)

  第十章   期間の計算  (第200条から第204条)

  第十一章  附則     (第205条から第206条)


 民法総則においては、法人や民事に関わる権利、法律行為、責任、時効といった基本的かつ重要な事項に関する規定が含まれており、中国関係事業に従事する日本企業にとっても理解が求められる内容となっている。

 第二章以下の内容については次稿以下に譲ることとし、本稿においては、第一章における特徴的な規定を紹介したい。

 まず、冒頭規定である第1条においては、「中国的特色のある社会主義の発展要求への適応」「社会主義革新的価値観の発揚」といった社会主義的な文言が並ぶ。また、第9条においては、民事主体が民事活動に従事する際には、「資源の節約」「生態環境の保護」に寄与すべきとされ、「環境」という中国の社会情勢を反映した内容といえる。さらに、民事紛争処理の指針を定める第10条では、法律の規定がないときは、公序良俗に反しないことを前提として慣習を適用することができるとされている。同じく民事活動の指針を定める民法通則の第6条における「国の政策」が民法総則の紛争処理指針から削除されている点が注目される。

(つづく)

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