ベトナム:新しい環境保護政令における拡大生産者責任(EPR)(2)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 中 川 幹 久
政令08号における拡大生産者責任の主なポイント
政令08号では、上述した新法で定めるリサイクル責任及び回収・処分責任の具体的な内容・運用などについて、概要、以下のように定めている。
(1) リサイクル責任
リサイクル責任の対象となる製品・包装を別紙において列挙し、かかる対象製品をベトナム国内市場において販売するために製造・輸入した者(但し、以下の責任主体から除外される者を除く。)は、所定のリサイクル責任を負うこととしている。
● 責任主体から除外される者:
➢ 輸出(再輸出)・研究目的で製品・包装を製造・輸入した者
➢ 包装が対象となる製品の年間売上が300億ベトナムドン(約1億4200万円)に満たない包装の製造者、及び、200億ベトナムドン(約9500万円)に満たない包装の輸入者
● 対象となる製品:電球、携帯電話・タブレット端末、パソコン、ディスプレイ、プリンター、印刷機、AV機器(カメラ、スピーカー・アンプ)、テレビ・スクリーン、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・乾燥機、ストーブ・オーブン・電子レンジ、太陽光発電パネル、蓄電器、電池、エンジン用潤滑油、チューブ・タイヤ、車両(2輪、3輪及び4輪)、所定の重機
● 包装が対象となる製品:食品、化粧品、薬品、肥料・動物飼料・獣医薬、家庭用・農業用・医療用の洗剤・調合剤、セメント
● 施行時期:
➢ 包装が対象となる製品、並びに、電池・蓄電器、潤滑油及びチューブ・タイヤ:2024年1月1日
➢ 電化製品:2025年1月1日
➢ 車両・重機等:2027年1月1日
責任主体から除外される者を除き、ベトナム国内市場で販売するために対象製品・包装を製造・輸入した者は、以下のリサイクル率でリサイクルを自ら行うか、天然環境資源省が公表する認可されたリサイクル業者に委託するか、又は、以下の財政貢献金をVEPFに支払う必要がある。リサイクルを自ら行う場合の年間のリサイクル計画・(前年の)実績については毎年3月31日までに天然環境資源省に登録しなければならない。
● リサイクル率:製品・包装毎に、概要以下の通り定められている。
➢ 包装:材質に応じ、10~22%の間で定められている
➢ 電池・蓄電器:種類に応じ、8~12%
➢ エンジン用潤滑油:15%
➢ タイヤ・チューブ:5%
➢ 電化製品:種類に応じ、5~9%(但し、携帯電話は15%)
➢ 車両:種類に応じ、0.5~0.7%(但し、重機は1%)
● 財政貢献を求められる金額:以下の計算式により算出する。リサイクル・コスト基準については具体的な数値は政令では示されておらず、天然環境資源省が3年毎に定め、首相に提出することとされている。
[財政貢献金額]=[リサイクル率]×[製品・包装の分量]×[リサイクル・コスト基準]
財政貢献金は年に一回4月20日までにその全額を一括して支払うか、又は、年に2回の分割払いとし、半額ずつをそれぞれ4月20日及び10月20日までに支払う必要がある。
(2) リサイクル・回収困難な製品・包装の回収・処分責任
政令08号では、回収・処分責任の対象となる製品・包装について、以下の対象製品・包装を別紙において列挙している。こうした対象製品・包装をベトナム国内市場において販売するために製造・輸入した者(但し、以下の責任主体から除外される者を除く。)は、毎年3月31日までに当該製品・包装の種類及び分量を所定のフォームに従って管轄当局に申告するとともに、以下の財政貢献金額をVEPFに対して支払う義務を負う。
● 責任主体から除外される者:
➢ 輸出(再輸出)・研究目的で製品・包装を製造・輸入した者
➢ 対象となる製品の年間売上額が300億ベトナムドン(約1億4200万円)に満たない製造者、及び、200億ベトナムドン(約9500万円)に満たない輸入者
● 対象製品・包装:殺虫・殺菌剤の容器、使い捨ての電池、オムツ・生理用ナプキン・使い捨てウエットタオル、ガム、タバコ、合成プラスティックを用いた各種製品(例えば、トレイ・ナイフ・フォーク・スプーン・箸・カップ・箱・使い捨て食品ラップ、シャンプー・歯磨き・整髪剤・風船・テープなど、衣類・アクセサリー・革製品・鞄・靴・サンダル、玩具、家具、建設資材など)
● 財政貢献金額:対象製品・包装毎に、一定数量・分量あたりの金額(例えば、殺虫剤容器は材質毎に1個あたり20~250ベトナムドン、トレイ・ナイフ・フォーク・スプーン・箸・カップ等の場合1kgあたり1500ベトナムドン、タバコの場合20本あたり60ベトナムドン)、あるいは、対象製品等の売上・輸入価値に対する割合(例えば、使い捨て電池、オムツ・ウエットタオル類、ガムは、その1%)の形で定められている。財政貢献金額は5年に一回見直すこととされている。
(3) 関係当局間での情報の共有
リサイクル責任・回収処分責任を負う主体や、対象製品・包装の情報の把握等にあたっては、税務当局、税関当局、企業登録を管轄する当局が情報を共有すること、国家EPR電子ポータルは税務・税関・企業登録それぞれのデータベースと接続させることが規定されている。上述のリサイクル・回収処分責任を巡る運用にあたっては、企業登録情報、納税・通関に関する情報を当局側も把握した上で規制を運用することを想定しているものと思われる。
以 上
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(なかがわ・もとひさ)
長島・大野・常松法律事務所ホーチミンオフィス代表。1999年慶応義塾大学法学部法律学科卒業。2003年第一東京弁護士会登録。2009年 Stanford Law School(LL.M.)卒業。2009年~2010年Pillsbury Winthrop Shaw Pittman LLP(ニューヨーク)勤務。2011年11月から約2年半、アレンズ法律事務所ホーチミンオフィスに出向。ベトナム赴任前は、M&Aその他の企 業間取引を中心とした企業法務全般にわたるリーガルサービスを提供し、現在は、ベトナム及びその周辺国への日本企業の進出及び事業展開に関する支援を行っ ている。
長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/
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