経産省、「対話型株主総会プロセス」の実現に向けた取組状況について
フォローアップを実施
--招集通知等の電子提供、議決権行使プロセスの電子化に取り組む企業が大幅に増加--
経済産業省は4月21日、「対話型株主総会プロセス」の実現に向けた取組状況についてフォローアップを実施した結果を公表した。
経産省では2015年11月に「株主総会プロセスの電子化促進等に関する研究会」(座長=尾崎安央・早稲田大学法学学術院教授)を設置し、2016年4月、「対話先進国」の実現に向けた環境整備の一環として、情報開示を充実させ、株主の議案検討期間を確保するための方策について提言をとりまとめている。今般、同提言内容について、企業・投資家・対話支援産業等の関係者による取組状況のフォローアップを実施したものである。
フォローアップの概要を紹介すると、招集通知の早期(発送前)Web開示に関しては、2016年6月総会企業では、招集通知を発送する前に自主的にWeb開示(早期Web開示)した企業の数は1,605社と、前年(769社)に比べて大幅に増加した。早期Web開示日を考慮に入れると、全体の約6割の招集通知情報が、総会の3週間以上前に開示または発送されていた。なお、早期Web開示を実施した企業のうち、約7割が、招集通知の印刷終了後にWeb開示を行い、約3割(533社)は、発送日の1営業日前にWeb開示していた。
英文招集通知を作成・開示した企業は、2016年6月総会企業のうち634社と、前年(398社)に比べ大きく増加した。
これらについて今後期待される対応の方向性としては、「本研究会の提言も踏まえ、早期(発送前)Web開示に取り組む企業が更に増加し、取締役会決議直後や印刷原稿校了直後などにWeb開示する動きが広まる等、企業における取組の進展が期待される」とともに、「早期Web開示に際しては、①取引所に別途提出する「独立役員届出書」や②インターネット開示によりみなし提供される書類も、同時にTDnetに提出されることが望ましい」としている。
議決権行使プロセス全体の電子化の促進に関しては、「議決権電子行使プラットフォーム」への参加企業数は、2015年6月末の555社から2017年3月末の807社へ増加した(本年6月時点での参加企業数は820~830社となることが見込まれている)。
議決権電子行使プラットフォームの運営事業者(ICJ)は、利用効果等の広報活動を企業・運用会社・アセットオーナーに対して随時展開しており、さらに東証は、全上場会社に対して当該プラットフォームへの参加を促す文書を今年1月に発出している。
これについて今後期待される対応の方向性としては、「本研究会の提言も踏まえ、企業・投資家・対話支援産業等の関係者において、上場会社や国内機関投資家による議決権電子行使プラットフォームへの参加・利用の拡大、電子行使プラットフォーム間のシステム連携、議決権電子行使プラットフォームの利用手続の円滑化に向けた取組が進むことを期待する」として、「上記取組を進める上で、議決権行使に関わる多様な関係者が率直に意見交換できる場を設けることも一案である」としている。
株主総会関連日程の適切な設定に関しては、「株主総会に関する基準日を決算日とは異なる日に設定しやすい環境整備」について、全国株懇連合会は昨年10月、決算日とは異なる日に議決権行使基準日を設定し当該基準日から3カ月以内に株主総会を開催することで、決算日から株主総会までの時間的余裕を確保する場合の実務対応について検討した結果を公表した。さらに今年2月には、全株懇定款モデル等を変更し公表した。
また、平成29年度税制改正では、コーポレートガバナンス改革・事業再編の環境整備の一環として、法人税等の申告期限の見直しが手当てされ、たとえば3月決算企業が、決算日から3カ月を超えた7月に株主総会を開催する場合、法人税等の申告期限を株主総会後まで延長することができるようになった。
これについて今後期待される対応の方向性としては、「議決権行使基準日を決算日とは異なる日に設定することで、決算日から総会日までの時間的余裕を確保するという取組は、株主の議案検討や対話期間を確保するという観点に加え、実質的判断に基づく議決権行使を促すことになるなど、年間を通じた対話の充実に資するものと期待される」として、「本研究会の提言も踏まえ、対話に取り組む企業が、自社の状況・判断に応じて、株主総会関連日程を適切に設定しやすいような環境づくりが進むことを期待する」としている。
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○ 経産省、「対話型株主総会プロセス」の実現に向けた取組状況についてフォローアップを実施(4月21日)
http://www.meti.go.jp/press/2017/04/20170421002/20170421002.html - 参考
- ○ 森口保「株主総会プロセスの電子化促進等に関する研究会報告書の概要-対話先進国の実現に向けて-〔上・下〕」商事法務2104号・商事法務2105号
- ○ 中川雅博「全株懇『企業と投資家の建設的な対話に向けて~対話促進の取組みと今後の課題~』の解説」商事法務2116号4頁以下