◇SH2881◇マレーシア:マドリッド協定議定書への加盟及び商標法の改正 松本岳人(2019/11/12)

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マレーシア:マドリッド協定議定書への加盟及び商標法の改正

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 松 本 岳 人

 

 2019年9月27日、マレーシア政府は、世界知的所有権機関(WIPO)国際事務局長に標章の国際登録に関するマドリッド協定の1989年6月27日にマドリッドで採択された議定書(以下「マドリッド協定議定書」という。)への加盟文書を寄託した。2019年12月27日からマレーシアでもマドリッド協定議定書が発効する予定であり、これにより日本からの国際登録出願によってマレーシアでも商標の保護を受けられることとなる。マレーシアの加盟により、ASEAN加盟国10か国のうち、ミャンマー連邦共和国を除く9か国がマドリッド協定議定書に加盟したこととなり、東南アジア地域において商標の国際出願が認められる範囲がさらに広がることとなる。

 

 また、マドリッド協定議定書への加盟に先立ち、2019年7月23日に、商標法(Trademarks Act 2019)の改正も行われており、同法も2019年12月27日から施行される予定である。

 マレーシアにおける商標法は、これまで1976年に成立した商標法によって規律されていたところ、今般の法改正によりマドリッド協定議定書への加盟に伴う国際商標出願及び登録に関する規定の新設に加えて、マレーシア国内における商標制度についても多岐にわたる改正がなされている。以下では商標法の主な改正内容を紹介する。

 

 1. 非伝統的商標の追加

 商標の対象となる標章の範囲に、伝統的に商標の対象となる文字や図形などに加えて、製品の形状、色彩、音、匂い、ホログラム等が追加されることとなり、それらも自己の商品又は役務を第三者のものと識別可能なものであれば、商標として登録することが可能となる。

 

2. 商標登録拒否事由の明確化

 商標の登録拒否事由は、絶対的な拒否事由と相対的な拒否事由に分類され、新たな絶対的な拒否事由として、専ら製品の性質自体に起因する形状、技術的成果を得るために必要な形状、又は製品の実質的価値を付与する形状からなる標章、及び専ら国名からなる標章などが追加されている。

 

3. 商標の担保対象化

 登録済みの商標については、無形資産ではあるものの、動産と同様に取り扱われることとされ、動産と同様の担保対象となることとされた。

 

4. 商標侵害に対する救済

 商標侵害を理由として裁判所に申し立てることができる対象が明確化され、救済手段としても差止め、損害賠償、不当利得返還請求などが認められることが明確化された。

 

5. 刑事罰

 従来の商標法には商標侵害に関する刑事罰に関する規定がなく、取引表示規制の違反によって処罰される可能性があるに過ぎなかった。改正法においては商標侵害に対する刑事罰の規定が追加され、あわせて規制当局の捜査権限等も明確化された。

 

以上

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