三菱UFJ信託銀行、個人情報の利用目的の改定
岩田合同法律事務所
弁護士 藤 原 宇 基
三菱UFJ信託銀行は、同社の有する個人番号(いわゆる「マイナンバー」)および個人番号をその内容に含む個人情報(「特定個人情報等」)の利用目的に、「預貯金口座付番に関する事務のため」という目的を加え、平成29年7月18日付でこれを公表した。変更は、平成30年1月1日からとされている。
預貯金口座付番とは、預貯金口座をマイナンバーと紐付けることをいい、①預金保険機構等によるペイオフのための預貯金額の合算において、マイナンバーの利用を可能とすること、及び、②金融機関に対する社会保障制度における資力調査や税務調査において、マイナンバーが付された預金情報を効率的に利用できるようにすることを目的として[1]、㋐預金保険事務について、マイナンバーの利用対象事務を追加すること(番号法の改正)、㋑社会保障給付に係る資力調査事務について、金融機関等に対する照会事項にマイナンバーを追加すること(国民年金法等の社会保障給付関係法の改正)、㋒税務調査事務について、金融機関等に対してマイナンバーとともに預貯金情報を管理する義務を課すこと(国税通則法及び地方税法の改正)を内容とする各改正法が、平成27年9月9日に公布され、施行は公布の日から3年以内とされている[2]。
金融機関等がマイナンバーと紐付けて管理すべき預貯金者等情報は、預貯金者等の氏名(名称)及び住所(居所)のほか、顧客番号、預貯金等の口座番号、口座開設日、種目、元本の額、利率、預入日、満期日とされている(国税通則法施行規則11条の4(未施行))。
また、金融機関等は、税務当局からの預貯金調査に対して迅速・的確な回答ができるようにするため、その預貯金者等情報のデータベースにおいて、各預貯金等のレコード(データの単位)ごとに、その預貯金者等の「番号」を記録(表示)することとされている(国税通則法施行令30条の5(未施行))。
預貯金者の金融機関等に対するマイナンバーの告知は義務ではなく、あくまで任意であり、金融機関における対応については、新規口座開設者からは口座開設時に顧客の番号を取得できるよう告知の求めを行い、既存口座については、顧客の来店時などに番号告知の求めを行うこととするなどの事務ガイドラインを策定し、進めることとされている[3]。
全銀協もホームページにおいて、「銀行は、2018年1月からはじまる預貯金口座付番に対応するため、ほとんどの取引においてマイナンバーの届出への協力をお願いすることになります。」としてマイナンバーの届出を呼び掛けている(一般社団法人全国銀行協会HP https://www.zenginkyo.or.jp/article/tag-f/8188/)。
なお、預貯金者のマイナンバー告知が任意であることから、預貯金口座への付番が進まないことも考えられるが、これらの法令の規定の施行後3年(平成33年)を目途に、金融機関の実務や付番の状況等を踏まえ、既存口座への付番を官民挙げて集中的に進めるための方策につき、法改正も視野に検討を行うとされている。
【「個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律案(概要)」 平成27年2月16日 内閣府大臣官房番号制度担当室 抜粋】
[1] 次期通常国会で個人情報保護法等と一括改正を予定しているマイナンバー法改正関係について(案)http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/pd/dai13/siryou3.pdf
[2] 財務省平成28年度税制改正の解説「国税通則法等の改正」https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2016/explanation/pdf/p0857_0902.pdf
[3] 次期通常国会で個人情報保護法等と一括改正を予定しているマイナンバー法改正関係について(案)http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/pd/dai13/siryou3.pdf