◇SH1583◇金融庁・法務省、事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための環境整備に向けた対応を公表(2018/01/15)

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金融庁・法務省、事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための環境整備に向けた対応を公表

−−実務を明確化する法令解釈の公表等を年度内目途に行う−−

 

 金融庁と法務省は平成29年12月28日、金融商品取引法に基づく有価証券報告書と会社法に基づく事業報告・計算書類(事業報告等)との「一体的開示」をより行いやすくするため、「一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について」を取りまとめ、公表した。

 政府では、日本経済再生本部において「未来投資戦略2017」(平成29年6月9日閣議決定)を策定し、「国際的に見て最も効果的かつ効率的な開示の実現及び株主総会日程・基準日の合理的な設定のための環境整備を目指す」として、「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示を可能とするため、引き続き、制度・省庁横断的な検討を行う場において、関係省庁等が共同し、企業・投資家等の意見を聞きながら、異なる制度間で類似・関連する記載内容の共通化が可能な項目について必要な制度的な手当て、法令解釈や共通化の方法の明確化・周知等について検討を加速し、本年中に成案を得る」こととしていた。

 これを受けて、今般、金融庁と法務省は、事業報告等と有価証券報告書の記載内容の共通化をより容易とするための手当て等についての検討を踏まえ、「一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について」を公表したものである。

 以下では、金融庁と法務省が一体的開示をより行いやすくするための環境整備の一環として、平成29年度中を目途としてすみやかに対応することとした15項目とそれに対する対応の概要を紹介する(なお、法令の略称については後掲参照)。

 

○「一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について」(平成29年12月28日、金融庁・法務省)の概要

(1) 「主要な経営指標等の推移」/「直前三事業年度の財産及び損益の状況」(開示府令第三号様式記載上の注意(5)/施規第120条第1項第6号)

①「1株当たり当期純利益金額」と「1株当たり当期純利益」の項目名の記載については、後者に共通化して記載することが可能であること、また、「純資産額」と「純資産」及び「総資産額」と「総資産」の項目名の記載については、それぞれいずれの表現にも共通化して記載することが可能であることを、制度所管官庁が妥当性を確認したひな型において明確化する。この他、有価証券報告書の記載を基礎として、共通の記載が可能であることも明確化する。

(2) 「事業の内容」/「主要な事業内容」(開示府令第三号様式記載上の注意(7)/施規第120条第1項第1号)

①  有価証券報告書にあっては、例えば「事業の内容」について、投資家の理解が容易になる観点から、記載内容が同様である又は重複する他の箇所にまとめて記載した上で、当該他の箇所を参照する旨の記載を行うことが可能であることを明確化した開示ガイドライン5-14及び24-10の内容を分かりやすく周知する。

②  有価証券報告書にあっては、系統図以外の図や表等の形式により、企業の実態に応じて投資家に対してより分かりやすく示すことが可能であることを明確化する法令解釈の公表を行う。

 

(3) 「関係会社の状況」/「重要な親会社及び子会社の状況」について(開示府令第三号様式記載上の注意(8)/施規第120条第1項第7号)

①  有価証券報告書のひな型に従った記載により共通の記載が可能であることを、制度所管官庁が妥当性を確認したひな型において明確化する。

 

(4) 「従業員の状況」/「使用人の状況」(開示府令第三号様式記載上の注意(9)/施規第120条第1項第2号)

①  「従業員の状況」と「使用人の状況」について、実務上、「従業員」という用語を用いた共通の記載が可能であることを明確化する法令解釈の公表を行う。

②  対象会社の範囲について、実務上、連結会社について記載した、共通の記載をすることが可能であることを明確化する法令解釈の公表を行う。

 

(5) 「経営上の重要な契約等」/「事業の譲渡」等(開示府令第三号様式記載上の注意(14)/施規第120条第1項第5号ハからへまで)

①  事業の譲渡等について業務執行を決定する機関における決定があったときは、有価証券報告書の組織再編成契約に関する開示の場合と同様に、当該事業の譲渡等について事業報告の内容に含めなければならず、有価証券報告書の記載と事業報告の内容との間で開示の要否について相違はないことを明確化する法令解釈の公表を行う。

 

(6) 「主要な設備の状況」/「主要な営業所及び工場」の状況(開示府令第三号様式記載上の注意(18)/施規第120条第1項第2号)

① 対象企業について、実務上、提出会社+国内子会社+在外子会社に共通化することが可能であることを明確化する法令解釈の公表を行う。この他、有価証券報告書における「主要な設備」と事業報告における「主要な営業所及び工場」が重なる範囲で共通の記載が可能であることを、制度所管官庁が妥当性を確認したひな型において明確化する。

② 有価証券報告書について、製造業以外の業種にあっては、開示府令第三号様式記載上の注意(1)bに基づき、開示府令に規定された様式に準じて記載することとされており、業種の特性に応じた記載が可能であることを、制度所管官庁が妥当性を確認したひな型において明確化する。

 

(7) 「大株主の状況」/上位十名の株主に関する事項(開示府令第三号様式記載上の注意(25)/施規第122条第1号)

① 株式の所有割合について、有価証券報告書でも、発行済株式総数から自己株式数を控除して算定することとする開示府令の改正を行う。

② 事業年度末日に代えて、議決権行使基準日において有する株式の数の割合が高い株主に関する事項を記載することを可能とする開示府令及び施規の改正を行う。

(開示府令について、平成30年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書について適用する予定で改正手続中。施規について、平成30年3月31日以後に終了する事業年度に係る事業報告について適用する予定で改正案を公表し、パブリック・コメントを受け付けている。)

 

(8) 「ストックオプション制度の内容」/「新株予約権等に関する事項」(開示府令第三号様式記載上の注意(27)/施規第123条第1号及び第2号)

① 有価証券報告書について、「新株予約権等の状況」、「ライツプランの内容」及び「ストックオプション制度の内容」の項目を統合し、かつ、ストックオプションについては、財務諸表注記への集約を可能とする開示府令の改正を行う。

② 有価証券報告書における記載時点について、事業年度末から変更がない場合には、その旨を記載することにより提出日の前月末の記載を省略可能とする開示府令の改正を行う。

③ 開示府令の様式の表を撤廃し、一覧表形式で記載することを可能とする開示府令の改正を行う。

④ ストックオプションを保有している役員の区分について、事業報告における区分に基づいて記載することで共通の記載が可能であることを、制度所管官庁が妥当性を確認したひな型において明確化する。

(開示府令について、平成30年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書から適用する予定で改正手続中。)

 

(9) 「役員の状況」/会社役員の「地位及び担当」並びに「重要な兼職の状況」(開示府令第三号様式記載上の注意(36)/施規第121条第2号及び第8号)

① 事業報告の「地位」と有価証券報告書の「役名」については、共通の記載が可能であること、事業報告の「担当」に記載すべき内容については、有価証券報告書の「職名」又は「略歴」の欄に記載することが可能であること及び事業報告の「重要な兼職の状況」に記載すべき内容については、有価証券報告書の「略歴」の欄に記載することが可能であることを明確化する法令解釈の公表を行う。

② 兼職の範囲について、有価証券報告書においても特段の限定はなく、事業報告と共通の記載が可能であることを明確化する法令解釈の公表を行う。

 

(10) 「社外役員等と提出会社との利害関係」/社外役員の重要な兼職に関する事項(開示府令第三号様式記載上の注意(37)及び開示ガイドライン5-19-2/施規第124条第1項第1号及び第2号)

① 事業報告における提出会社と「当該他の法人等」との「関係」と、有価証券報告書における「人的関係、資本的関係又は取引関係その他の利害関係」について、実務上、共通の記載が可能であることを明確化する法令解釈の公表を行う。

 

(11) 「社外取締役の選任に代わる体制及び理由」/「社外取締役を置くことが相当でない理由」(開示府令第三号様式記載上の注意(37)/施規第124条第2項)

① 「社外取締役を置くことが相当でない理由」と「社外取締役(中略)を選任していない場合には、その旨及びそれに代わる社内体制及び当該社内体制を採用する理由」について、共通の記載が可能であることを明確化する法令解釈の公表を行う。

 

(12) 「役員の報酬等」/「会社役員の報酬等」(開示府令第三号様式記載上の注意(37)/施規第121条第4号から第6号まで並びに第124条第1項第5号及び第6号)

① 取締役及び監査役の報酬総額について、有価証券報告書の記載を基礎として、社外役員の報酬総額を社外取締役の報酬総額と社外監査役の報酬総額とに区分して記載することで、共通の記載が可能であることを明確化する法令解釈の公表を行う。

 

(13) 「監査公認会計士等に対する報酬の内容」/「各会計監査人の報酬等の額」及び「株式会社及びその子会社が支払うべき金銭その他の財産上の利益の合計額」(開示府令第三号様式記載上の注意(38)/施規第126条第2号及び第8号

イ)

① 事業報告についても、有価証券報告書の様式に従って、株式会社及び連結子会社の別に、監査証明業務及び非監査業務それぞれに区分して報酬額を記載することで、共通の記載が可能であることを明確化する法令解釈の公表を行う。

 

(14) 財務諸表及び計算書類の表示科目(財規第17条第1項第7号等/計規第74条第3項第1号トからリまで等)

① 計規は表示科目の名称や配列を規定しておらず、有価証券報告書に合わせて共通の記載が可能であることを明確化する法令解釈の公表を行う。

 

(15) 財務諸表及び計算書類の1株当たり情報に関する注記(財規第68条の4及び第95条の5の2並びに連結財規第44条の2及び第65条の2/計規第113条)

① 「1株当たり当期純利益金額」と「1株当たり当期純利益」について、後者が会計基準で用いられている用語であり、後者に共通化して記載することが可能であることを、制度所管官庁が妥当性を確認したひな型において明確化する。

 

(凡例)

開示府令・・・企業内容等の開示に関する内閣府令

開示ガイドライン・・・企業内容等の開示に関する留意事項について

財規・・・財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則

連結財規・・・連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則

施規・・・会社法施行規則

計規・・・会社計算規則

 

 

 

 

日本経済再生本部、事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組について(平成29年12月28日)

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/#other

(本体) https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/torikumi_hontai.pdf

(参考資料) https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/torikumi_siryou.pdf

○金融庁・法務省、一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について

http://www.fsa.go.jp/news/29/20171228/20171228.html

○経産省、「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組について」を取りまとめました

http://www.meti.go.jp/press/2017/12/20171228003/20171228003.html

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