◇SH2009◇実学・企業法務(第159回)法務目線の業界探訪〔Ⅳ〕建設・不動産 齋藤憲道(2018/08/02)

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実学・企業法務(第159回)

法務目線の業界探訪〔Ⅳ〕建設・不動産

同志社大学法学部

企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

〔Ⅳ〕建設(ゼネコン、戸建て、下請)、不動産取引

2. 建設・不動産取引には多くの規制がある

(2) 建築物の耐震性強化・耐久性向上を図る法律が制定され、建築基準法を補強

1) 耐震改修促進法

 阪神淡路大震災の直後に「耐震改修促進法[1]」が制定され、既存の建築物の点検と、必要な補強改修の促進が図られた。

〔耐震改修促進法の概要〕

・国土交通大臣は「基本方針」、都道府県は「都道府県耐震改修促進計画」を定める義務を負う。

  市町村は「市町村耐震改修促進計画」を定める努力義務を負う。

・「特定建築物」の所有者に対して耐震診断・耐震改修の努力義務を課す。

  1. 1 指導・助言の対象
    多数の者が利用する学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店等
     (注) 小学校・老人ホームは避難確保の点からの配慮が必要
    一定量以上を取り扱うガソリンスタンド・塗料店等
    倒壊した場合に道路を閉塞する通行障害建築物
  2. 2 耐震診断・公表対象
    要安全確認計画記載建築物(病院・官公署等)は耐震診断を行い、国土交通省令に従って公表する。
  3. 3 上記1及び2において倒壊の危険性が高い場合、建築基準法による改修命令等
    「耐震改修支援センター」が債務保証・情報提供等を行う。

2) 長期優良住宅普及促進法[2](任意)

 耐久性・耐震性等を備えた質の高い住宅の建築・適切な維持保全を実行する者に恩典を付与して、長期優良住宅の増加を促進する。

  1. ① 長期優良住宅建築等計画の認定基準
    (主な項目)構造躯体等の劣化対策、耐震性、維持管理・更新の容易性、可変性、高齢者等対策、省エネルギー対策、居住環境(地区計画、景観計画等)、住戸面積、維持保全計画の策定
  2. ② 認定の標準的な手続き
    登録住宅性能評価機関による事前技術的審査を行い、「適合証」を取得。
     → 所管行政官庁に「認定申請書[3]」を提出
     → 所管行政庁が「長期優良住宅認定通知書」を交付
     → 認定を受けた計画に基づいて建築・メンテナンスを実施。以後、その記録を作成、保存。

 恩典として、減税措置(住宅ローン減税、贈与税減税等)・住宅ローン支給支援等を設定。

  1. (注) 優遇措置には有効期限があるので、検討の都度、恩典の有無・残存期間を確認する必要がある。

 

(3) 建築物の維持管理の水準向上が求められる

 建築物に対する新たな規制が制定されるときは、その時点の既存の建築物が規制の対象外とされる。このため、実際には、最新の規制に違反する建築物が多数存在している。

 また、日本の建築物は、適切に補修すれば長期間の使用が可能であるにも係わらず、建築から取壊し・撤去までの期間が短く、社会資本が無駄遣いされているとの指摘も多い。

  1. (注) 課税計算用ではあるが、国税庁の耐用年数表は次のように規定している。
    木造・合成樹脂造のもの 事務所用24年 住宅用22年 旅館・ホテル等用17年
    木造モルタル造のもの  事務所用22年 住宅用20年 旅館・ホテル等用15年

 1300年前に建てられたとされる法隆寺を見ても、木造だから長持ちしないというわけではない。また、日本の各地に、100~200年前の建築物(古民家を含む)が多数存在している。

 最初の建築と、その後の維持管理が適切であれば、地震・台風が多く多湿な日本でも、長期間、優良な状態で使用することは可能だろう。

 一方で、現在、空き家が800万戸あると言われ、それへの対応が議論されている。

 これまで検討が進まなかった次のような分野で、新たな制度が求められよう。

  1. 〔新たな制度が求められる分野(例)
  2. ○ 既存の不適格建築物(違法建築)の取り扱い
     撤去を命令するか、増改築を是認するか
     建築後に制定された法令に適合しない場合
  3. ○ 老朽化又は損壊(火災、天災等による)した建築物への対応のあり方
     所有者は判明しているが放置している場合、及び、所有者が不明の場合
  4.     ・ 撤去・補修の責任の帰属、費用負担、所有権の帰属
      ・ 全損の場合、一部損壊の場合
      ・ 公益を著しく害している場合


[1] 建築物の耐震改修の促進に関する法律(1995年1月17日の阪神淡路大震災を受け、1995年10月27日制定)

[2] 「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」の略称。2008年制定。

[3] 「長期優良住宅の普及の促進に関する法律施行規則」に国が定める書類の詳細が示されている。

 

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