SH4422 改正UNCITRAL国際商事仲裁モデル法に対応する規律を設ける仲裁法の一部を改正する法律案が参議院本会議で可決・成立(2023年4月21日) 上西拓也(2023/04/21)

取引法務企業紛争・民事手続

改正UNCITRAL国際商事仲裁モデル法に対応する規律を設ける
仲裁法の一部を改正する法律案が参議院本会議で可決・成立(2023年4月21日)

岩田合同法律事務所

弁護士 上 西 拓 也

1 はじめに

令和5年4月21日、仲裁法の一部を改正する法律案[1](以下「改正法律案」という。)が参議院本会議で可決・成立した。

我が国の仲裁法は、UNCITRAL国際商事仲裁モデル法(以下「モデル法」という。)に準拠しているところ、2006年に一部改正されたモデル法への対応が一部未了であったことから、これに対応する規律を仲裁法に設けるための改正(以下「本改正」という。)が行われることとなった。

具体的な改正項目は、①仲裁廷における暫定保全措置命令に関する規律、②仲裁合意の書面性に関する規律、③仲裁関係事件手続に関する規律である。以下ではそのうちの重要な事項に絞って紹介する。

 

2 ①仲裁廷における暫定保全措置命令に関する規律

 ⑴ 暫定保全措置命令の定義及び類型

暫定保全措置命令とは、仲裁廷による仲裁判断があるまでの間、仲裁廷が当事者に対して、紛争の対象について仲裁廷が必要と認める暫定措置又は保全措置を講じることを命じるものをいう。

現行の仲裁法24条1項は、当事者間に別段の合意がない限り、仲裁廷が暫定保全措置の発令権限を有することを定めている。しかしながら、同項の規定からは、仲裁廷がどのような内容の暫定保全措置を発することができるかは明らかでなく、その判断は仲裁廷の裁量に委ねられている。また、暫定保全措置については、裁判所による強制的な実現の手続がなく、当事者が暫定保全措置に従わない場合には、仲裁合意の違反に基づく損害賠償等を求め得るにとどまる。

本改正では、モデル法の規定を踏まえ、暫定保全措置命令の類型及び発令要件が明確化され、さらに、執行に関する規律が設けられることとなった。

本改正において設けられた暫定保全措置命令の類型は以下のとおりである。

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(うえにし・たくや)

岩田合同法律事務所弁護士。2008年東京大学法学部卒業、2010年東京大学法科大学院卒業。2011年弁護士登録。『Q&A 家事事件と銀行実務』(共著、日本加除出版、2013年)、「各業務における反社勢力対応のポイント」(共著。銀行実務658号)、『Q&Aインターネットバンキング』(共著 金融財政事情研究会 2014年)等著作多数。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>
1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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