SH4507 Legal as a Service (リーガルリスクマネジメント実装の教科書) 第4回 忙しい法務のための人材育成(2019年報告書編) 渡部友一郎/東郷伸宏(2023/06/22)

そのほか法務組織運営、法務業界

Legal as a Service (リーガルリスクマネジメント実装の教科書)
第4回 忙しい法務のための人材育成(2019年報告書編)

Airbnb Japan株式会社
渡 部 友一郎

合同会社ひがしの里・セガサミーホールディングス株式会社
東 郷 伸 宏

 

リーガルリスクマネジメントの教科書 バックナンバー

 

©弁護士・グラフィックレコーダー 田中暖子 2023 [URL]

 

1 共通の悩みの特定

 今回は、忙しい法務のための人材育成について、「2019年報告書編」を最大限活用し、法務機能実装と人材育成を同時に達成するという内容です。

 はじめに、私たちの法務部門は慢性的に過重労働気味とお感じになられませんか。

 そのような環境のもと、共通の悩みとして他社の部門長及び管理職でよく話題になるのが「法務部門の人材育成」についてです。

 具体的な心の声を取り上げると、概要、「正直、自分の仕事に追われて、法務部門のメンバーの能力開発・キャリア支援については最低限のことしかできていない。申し訳ない気持ちであるが、枠組みをじっくり考える暇もない。」というものです。

 事実、よほど能力開発・キャリア支援が法務部門において仕組み化されていない限り、人材育成は各社にとって難しい問題です。管理職の誰しもがプレイヤーとして卓越していても、同僚・部下のポテンシャルを最大限引き出すような人材育成には時間が取りにくいものです。

 では、忙しい法務のための人材育成という共通の悩みをどのように解決していけるでしょうか、今回も一緒に考えて参りましょう。

 

1

2018年版報告書:

「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」
https://www.meti.go.jp/policy/kyoso_seisaku/kokusaizennbunn.pdf

2

2019年版報告書:

「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書~令和時代に必要な法務機能・法務人材とは~」
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/homu_kino/pdf/20191119_report.pdf

経営者が法務機能を使いこなすための7つの行動指針
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/homu_kino/pdf/20191119_report.pdf

 

2 共通の悩みの分析

 法務部門の人材育成という共通の悩みを丁寧に見ると、「人材育成しなければいけない必要性・プレッシャー」と「人材育成について考えを巡らせる時間の足りなさ」という葛藤が見つかります。私たちの多くは、法務のプロフェッショナルですが、人事や人材育成のプロフェッショナルではありません。

 この点、資本の充実した企業は、会社や人事部が提供する「管理職トレーニング」が充実している可能性があります。その一方で、スタートアップが最たる例ですが、管理職に昇進・任命されたものの、特別なトレーニングは特になく、走りながら考える「毎日がOJT」というような環境もあると思います。

 ところで、隣の芝生は青いです。特別な管理職トレーニングがない法務部門に所属していると、他社が羨ましく思えます(私も昔そうでした)。具体的には、所属企業がもっと上手なガイダンスを出してくれれば、「人材育成しなければいけない必要性・プレッシャー」が緩和され、歯車が回りだすのになぁという羨ましい気持ちです。

 

3 共通の悩みの評価

 ところが、往々にしてここに誤解が発生しています。

 すなわち、「管理職トレーニング」を受けている大手企業の法務部門幹部も「法務部門の人材育成をどうしよう……はぁ」という悩みを共通して抱えている場合が少なくありません。

 その理由は、「全社横断的に共通する管理職トレーニング」には、必ずしも「法務部門の管理職トレーニング」は含まれていないからです。したがって、「全社横断的に共通する管理職トレーニング」を受けた法務部門の管理職といえども、実は、大勢の方と同じく、法務のための人材育成について、枠組みが欲しいと思っているのです。

 そして、その悩みに関して、さらに深く潜って検討してみると、大勢の法務部門の「何か枠組みを提供してくれ!」という心の声にたどり着きます。時間も制約されている中で、大切な3つの法務機能を実装する人材育成のための道筋が欲しい、という点が、この共通の悩みの根源かもしれません。

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(わたなべ・ゆういちろう)

鳥取県鳥取市出身。2008年東京大学法科大学院修了。2009年弁護士登録。現在、米国サンフランシスコに本社を有するAirbnb(エアビーアンドビー)のLead Counsel、日本法務本部長。米国トムソン・ロイター・グループが主催する「ALB Japan Law Award」にて、2018年から2022年まで、5年連続受賞。デジタル臨時行政調査会作業部会「法制事務のデジタル化検討チーム」構成員、経済産業省「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会」法務機能強化実装WG委員など。著書に『攻めの法務 成長を叶える リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版、2023)など。

 

(とうごう・のぶひろ)

金融ベンチャー役員を経て、2006年サミー株式会社に入社。以降、総合エンタテインメント企業であるセガサミーグループの法務部門を歴任。上場持株会社、ゲームソフトウェアメーカー、パチンコ・パチスロメーカーのほか、2012年にはフェニックス・シーガイア・リゾート(宮崎県)に赴任。部門の立ち上げから、数十名規模の組織まで、多種多様な法務部門をマネジメント後、2022年には組織と個人の競争力強化を目的とする合同会社ひがしの里を設立。2023年からはセガサミーグループにおける内部監査部門を担当。

 

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