人的資本経営の実践と情報開示の実務対応
第7回:取締役会が果たすべき役割・アクション
日比谷タックス&ロー弁護士法人
弁護士 堀 田 陽 平
第2部 人的資本経営の実践
第7回:取締役会が果たすべき役割・アクション
【今回の狙い】 連載第7回では、「取締役会が果たすべき役割・アクション」について解説します。今回の内容は、次々回に解説する2021年6月のコーポレートガバナンス・コード改訂とも関係します。
【今回の主なターゲット】
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1 取締役会の役割を示した意義
これまで、人材に関する議論を取締役会においてすべき旨を述べたものはあまり多くなかったかと思われるところ、人材戦略に関する取締役会の役割を示したこと自体が、人材版伊藤レポートの一つの大きなポイントとも言えます。
人材版伊藤レポートが人材戦略に関する取締役会の役割を示したのは、本連載第2回で述べたとおり、経営上の意思決定が人材の視点抜きになされているのではないかという課題意識から、取締役会においても人材戦略上の議論を求めるものです。
特に、取締役会の役割を示すことで、ガバナンスの議論ともつなげることをも狙いとし、2021年6月のコーポレートガバナンス・コード改訂を意識しています。
人材版伊藤レポート2.0でも、「コーポレート・ガバナンス改革の文脈で捉える」という視点を持ち込んだ旨が明記されています(同2頁参照)。
2 人材版伊藤レポートが示す取締役会が果たすべき役割・アクション
⑴ 取締役会が果たすべき役割・アクション一覧
人材版伊藤レポートが示した取締役会が果たすべき役割・アクションは、以下のとおりです。
これを見てもお分かりになるかもしれませんが、基本的な発想は、主に上場企業の取締役会に求められる業務執行の意思決定の承認と、その実行の監督・モニタリングと同様であり、これらを人材戦略に引き直したものと言えます。
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⑵ 人材戦略に関する取締役会の役割の明確化
取締役会が果たすべき役割・アクションとして、まず「人材戦略に関する取締役会の役割の明確化」が挙げられています。
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(ほった・ようへい)
2016年弁護士登録(第69期。第二東京弁護士会)。2017年鳥飼総合法律事務所入所。
2018年7月現在の事務所へ移籍。2018年10月から経済産業省経済産業政策局産業人材政策室(当時。現在は「課」)に任期付き職員として着任。
経済産業省では、兼業・副業の推進、テレワークの推進、フリーランス政策等の柔軟な働き方に関する政策立案や、人材版伊藤レポートの策定等の人的資本経営の推進に関する政策立案等に従事。経済産業省から帰任後も人的資本経営の実践・開示に関するセミナーや寄稿を行う。