シンガポール:公正証書作成手続の電子化制度の導入(1)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 松 本 岳 人
1 はじめに
2023年8月2日、シンガポール国会において、公正証書作成に係る一連の手続を電子化することを可能とする制度を含む法案(The Oaths, Declarations and Notarisations (Remote Methods) Bill及びThe Constitution of the Republic of Singapore (Amendment No. 2) Bill)が可決された。かかる制度の導入は、シンガポール政府による電子的な取引を促進する政策方針に沿った法的枠組みの段階的な見直しの一つであり、詐欺的な行為への対処は引き続き必要にはなるものの、技術的な進展により実現が可能であると考えられたものである。実務上、シンガポールにおいて公証人による書面の公証が求められる場面は度々生じるところである(例えば、シンガポールの裁判所や行政当局に提出する宣誓が必要な書面を公証してもらう際や、契約取引実行の前提書類としてサイン証明書を作成する場合等)。かかる手続が、昨今急速に進んでいる書面の電子化やいわゆるデジタルトランスフォーメーション(DX)の阻害要因であった点は否定できなかったが、電子化制度の導入により、今後更なる書面の電子化の進展が期待されるところである。
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(まつもと・たけひと)
2005年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2007年慶應義塾大学大学院法務研究科修了。2008年に長島・大野・常松法律事務所に入所後、官庁及び民間企業への出向並びに米国留学を経て、2017年から2020年まで長島・大野・常松法律事務所シンガポール・オフィス勤務。現在は、日本及び東南アジア地域での不動産・インフラ関係の案件を中心に企業法務全般についてアドバイスを行っている。
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