SH4808 法務省、「起業家の負担軽減に向けた定款認証の見直しに関する検討会」における議論の取りまとめを公表 金井優憲(2024/02/14)

組織法務商業・法人登記

法務省、「起業家の負担軽減に向けた定款認証の
見直しに関する検討会」における議論の取りまとめを公表

岩田合同法律事務所

弁護士 金 井 優 憲

 

 はじめに

 株式会社の設立には、設立時の定款について公証人の認証(定款案の内容確認と発起人等との面前確認)を受けることが必要とされている(会社法30条等。以下、当該手続を「定款認証」という。)。しかしながら、定款認証については、現在の制度・運用が、限りある時間・労力の中で創業準備を行う起業家にとって、円滑・迅速な起業の負担となっているのではないかなどといった指摘がある。こうした指摘を受け、法務省民事局内に「起業家の負担軽減に向けた定款認証の見直しに関する検討会」(以下「本検討会」という。)が設置され[1] 、その後議論が交わされたところ、法務省は、2024年1月31日、当該議論の取りまとめ(以下「本取りまとめ」という。)を公表するに至った。

 本稿では、本取りまとめの中で主要な論点とされた、①「モデル定款」の制度化の是非等、及び②公証人による面前での確認手続(以下「面前確認手続」という。)の見直しの概要を紹介する[2]

 

 本取りまとめの概要

 本取りまとめでは、定款認証制度の見直しについて、定款認証の有する意義・機能(すなわち、①定款や法人格の存立をめぐる紛争の予防、②不正な起業・会社設立の抑止、③マネー・ロンダリング対策(実質的支配者の把握)の3点。)が図られる必要があることを前提に、起業家の負担軽減を図る観点から、また、デジタル技術の活用も十分に視野に入れつつ、定款認証制度の見直しやこれに代わる代替手段の有無等を、両面から併せて検討していくことが相当であるとされた。

 その上で、本取りまとめは、本検討会において特に議論された、a)「モデル定款」(所定のフォームへ一定の必要事項(商号・事業目的・発行可能株式数等)を入力等することにより、定款案を簡易・確実・迅速に作成することが可能なシステム等を用いて作成された定款案)[3]の制度化の是非等、及びb)面前確認手続の見直し(公証人による発起人の本人確認及び真意(実質的設立意思。定款記載の会社を設立・活動する意思や、発起人として法的責任を負う認識等が含まれる。以下同じ)の確認についての手続の廃止又は省略の可否等)[4]の2つの論点について、これまでの議論を踏まえ、以下のとおり提言した。

 すなわち、a)については、本検討会での議論の状況(下記【表1】参照)を踏まえ、今後法務省を中心として、「モデル定款」の位置づけを明確にしつつ、これを利用し、認証手続に要する時間の大幅短縮を行う運用上の取組(B案)の早期実現に向けた具体的検討を進めるとともに、更に進んで、公証人による定款認証を不要とする制度設計(A案)についての必要な調査検討を早期に進めるよう提言した。

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(かない・まさのり)

岩田合同法律事務所所属。2015年京都大学法学部卒業。2017年京都大学法科大学院終了。2019年1月判事補任官。横浜地方裁判所勤務を経て、2022年4月「判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律」に基づき弁護士登録。

 

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>
1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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厚労省、個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会(第13回)資料〔これまでの議論の整理(報告書素案)〕
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_34484.html

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