EU、AI規則案を加盟国全会一致で承認
――2024年4月の欧州議会での成立が目前に――
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 中 崎 尚
1 はじめに
2024年2月2日、AIに関する世界初の画期的なルールともいわれるEU AI規則が、EU加盟国の全会一致で可決され、4月中旬にも欧州議会で正式に成立することが見込まれている。同規則は、生成AIを含め、高リスクのAIについて厳格なルールを定め、違反者にはGDPRのように高額な制裁金を課すことを定める。さらに、域外適用条項を備えており、日本企業にも少なからず影響が危惧されている。なお、本記事で取り上げているAI規則については、拙著『生成AI法務・ガバナンス』(商事法務、2024年4月刊行予定)でも紹介している。
2 これまでのAI規則の制定をめぐる経緯
「AI規則」のファーストドラフト[1]が公表されたのは、2021年4月のことであった。AIを対象として包括的な規制を行おうとする「AI規則」は画期的で、世界的に注目を集めた。各所での議論を経て、2023年5月、欧州議会(EU Parliament)内の域内市場・消費者保護委員会(IMCO)と市民的自由・司法・内務委員会(LIBE)の合同名義で全体的な修正案[2] が提示され、採択された。翌月2023年6月に、さらなる修正が加えられ、欧州議会本会議において、賛成多数で採択された[3]。
2023年6月より、欧州委員会(European Commission)・欧州議会・欧州連合理事会で三者協議(trilogue)が行われ、2023年12月、政治的合意に達したと報じられた。その後も、数週間にわたって、国内にAI事業を擁するなどの事情から、フランス、オーストリア、ドイツ等がこの法案に難色を示していたが、2024年2月2日、加盟国各国の代表は全会一致で承認するに至った。同日、欧州連合理事会の常駐代表委員会(COREPER)による承認が下り、AI規則案の最新の文言を含め、その合意内容が公開された[4](以下、「プレファイナル版」という)。本記事はプレファイナル版の文言に依拠している。
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(なかざき・たかし)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所スペシャルカウンセル。東京大学法学部卒、2001年弁護士登録(54期)、2008年米国Columbia University School of Law (LL.M.)修了、2009年夏まで米国ワシントンD.C.のArnold & Porter法律事務所に勤務。復帰後は、インターネット・IT・システム関連を中心に、知的財産権法、クロスボーダー取引を幅広く取扱う。日本国際知的財産保護協会編集委員、経産省おもてなしプラットフォーム研究会委員、経産省AI社会実装アーキテクチャー検討会作業部会構成員、経産省IoTデータ流通促進研究会委員、経産省AI・データの利用に関する契約ガイドライン検討会委員、International Association of Privacy Professionals (IAPP) Co-Chairを歴任。2022年より内閣府メタバース官民連携会議委員。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
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