SH4577 「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」報告書のパブコメと最終報告書の公表 中崎尚(2023/08/02)

そのほか新領域

「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」
報告書のパブコメと最終報告書の公表

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 中 崎  尚

 

1 はじめに

 総務省では、メタバース等の利活用やWeb3市場の拡大に向けた課題整理を目的として、2022年8月から2023年6月にかけて全11回にわたり「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」を開催、2023年2月10日に中間とりまとめを公表したのに続き、2023年6月16日から2023年7月9日の期間にわたって、報告書(案)に対する意見(パブリックコメント)の募集を実施した。2023年7月18日、寄せられた意見とそれに対する考え方、意見募集の結果を踏まえてとりまとめられた「報告書」およびその骨子を公表した。[1]本稿では、寄せられた意見とそれに対する考え方のポイントの紹介を中心とし、報告書については概要を紹介するにとどめる。報告書の詳細については、報告書(案)の詳細を説明した前回の記事を参照されたい。

 

2 寄せられた意見とそれに対する考え方のポイント

⑴ Web3とメタバースの関係(No.3、No.4)

 複数の意見において、Web3とメタバースという異なる概念をひとくくりにして議論するという研究会のあり方自体について疑問を投げかける声が見られた。これに対する研究会の考え方として、「報告書P25において、『Web3 とメタバースの関係は直結するものではなく、関連する部分がありつつ、独立に発展しているものと理解すべきではないか、他方で、両者の関係は常に意識すべきではないかとの見解が本研究会において示されている』旨、記載しております。」との見解が示されている。

⑵ 検討対象としてのメタバース(No.5)

 検討対象としてのメタバースが偏っている、研究会を一からやり直すべきとする意見に対しては、研究会の考え方として「本研究会においては、様々なユースケースを念頭に置きつつ情報通信行政に係る課題を整理することを目的として、事業者からのヒアリングや国際動向の情報等を踏まえ、法律や技術等、多様な分野の有識者により、多角的な議論を重ねてきました。こうした議論を踏まえ、現状、メタバースには定義が無く様々な利用形態があることは理解しつつ、本報告書案においては、第2章(1)①にあるとおり、議論の重点を置くポイントを整理するために、VR技術を活用した仮想空間を『メタバース』という用語として捉えたものです。」との回答がなされており、議論の対象としてVRゴーグルを装着して参加するバーチャル・ワールドに絞り込んだ経緯を説明している。

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(なかざき・たかし)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所スペシャルカウンセル。東京大学法学部卒、2001年弁護士登録(54期)、2008年米国Columbia University School of Law (LL.M.)修了、2009年夏まで米国ワシントンD.C.のArnold & Porter法律事務所に勤務。復帰後は、インターネット・IT・システム関連を中心に、知的財産権法、クロスボーダー取引を幅広く取扱う。日本国際知的財産保護協会編集委員、経産省おもてなしプラットフォーム研究会委員、経産省AI社会実装アーキテクチャー検討会作業部会構成員、経産省IoTデータ流通促進研究会委員、経産省AI・データの利用に関する契約ガイドライン検討会委員、International Association of Privacy Professionals (IAPP) Co-Chairを歴任。2022年より内閣府メタバース官民連携会議委員。

 

<事務所概要>
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