SH4940 厚労省、令和5年度「職場のハラスメントに関する実態調査」報告書を公表――今後必要な対策として3割超の企業が「ハラスメントの行為者に対する規制」を挙げる (2024/05/22)

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厚労省、令和5年度「職場のハラスメントに関する実態調査」
報告書を公表
――今後必要な対策として3割超の企業が「ハラスメントの行為者に対する規制」を挙げる――

 

 厚生労働省は5月17日、「職場のハラスメントに関する実態調査」報告書が取りまとめられたとし、公表した。「令和2年度」実態調査から3年が経過し、企業・労働者の状況などが変化していると考えられることから今後の施策に反映させるため、今般「令和5年度」実態調査として実施・取りまとめられたものである。

 調査は(A)企業調査と(B)労働者等調査からなる。(A)は2023年12月1日~12月29日、調査票郵送による「全国の従業員30人以上の企業・団体」25,000件を対象として実施され、有効回答7,780件を得た(有効回答率31.1%)。「令和2年度実態調査(企業調査)」は同様にして2020年10月3日~10月30日に実施、発送24,000件に対して回収6,426件であった(回収率26.8%)。

 上記(B)の調査(うち一般サンプル調査)については本年1月11日~1月29日に実施されたインターネット調査により「全国の企業・団体に勤務する20~64歳の男女労働者(経営者(自営業を含む)、役員、公務員を除く)」8,000名をサンプル数として取りまとめられている。「令和2年度実態調査(労働者等調査)」は同様に2020年10月6日~10月7日に実施。なお「令和2年度」調査は東京海上日動リスクコンサルティングへの委託調査、今般の「令和5年度」調査はPwCコンサルティングへの委託調査であり、令和5年度調査は「令和2年度の実態調査との比較も一部行うことから、前回調査の仕様を踏襲」したとされる。

 本調査の具体的な趣旨は「職場におけるパワハラ、セクハラ、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(以下「妊娠・出産・育児休業等ハラスメント」という。)、介護休業等に関するハラスメント(以下「介護休業等ハラスメント」という。)、顧客等からの著しい迷惑行為、就活等セクハラ等の発生状況や企業の対策の進捗、労働者の意識等を把握すること」である。上記(B)を巡っては「一般サンプル調査」に加え、「特別サンプル調査」として(a)女性の妊娠・出産・育児休業等ハラスメント、(b)男性の育児休業等ハラスメント、(c)就活等セクハラに特化した実態調査が、令和2年度調査とサンプル数が等しくなるように実施された。また、令和2年度調査において5名からなる検討委員会が設置されていたところ、令和5年度調査ではうち3名を共通とする計4名の有識者にヒアリングが実施されたうえで報告書が取りまとめられている。

 公表された「令和5年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」(表紙・目次および本調査に用いられた調査票を含む全385頁建てのPDFファイル)より、本稿においてまず(B)労働者等調査(一般サンプル調査)に関する調査結果の概要をみると(本報告書12頁以下・15頁以下参照。以下同様)、①「過去3年間に勤務先で受けたハラスメント」として「パワハラ、セクハラ、顧客等からの著しい迷惑行為」のうちもっとも多いのはパワハラ(19.3%)であり、次いで顧客等からの著しい迷惑行為(10.8%)、セクハラ(6.3%)となる。同様に令和2年度調査の結果(全261頁建て)をみると、パワハラ(31.4%)、顧客等からの著しい迷惑行為(15.0%)、セクハラ(10.2%)であった(令和2年度報告書10頁・11頁参照。以下同様)。

 ②ハラスメントを受けたとする回答者を対象に(i)パワハラの行為者を聞くと、上司(役員以外):65.7%、会社の幹部(役員):24.7%、同僚:20.2%の順となる。(ii)セクハラの行為者については上司(役員以外):51.1%、同僚:22.1%、会社の幹部(役員):16.5%。(iii)顧客等からの著しい迷惑行為では、顧客等(患者またはその家族等を含む)が82.3%にのぼる(本報告書17頁131頁以下)。令和2年度調査ではそれぞれ(i)パワハラについて上司(役員以外):67.9%、会社の幹部(役員):24.7%、同僚:18.5%、(ii)セクハラは上司(役員以外):55.2%、会社の幹部(役員):21.6%、同僚:21.0%、(iii)顧客等からの著しい迷惑行為は顧客等(患者またはその家族等を含む):77.1%であった(令和2年度報告書12頁)。

 同様に③ハラスメントを受けたとする回答者における「ハラスメントを受けた後の行動」として、(i)パワハラについてもっとも多い回答は「何もしなかった」(36.9%)となっており、次いで「家族や社外の友人に相談した」(19.3%)である。(ii)セクハラについては「何もしなかった」(51.7%)、「社内の同僚に相談した」(14.7%)、(iii)顧客等からの著しい迷惑行為については「社内の上司に相談した」(38.2%)、「何もしなかった」(35.2%)となっている(本報告書12頁~13頁、17頁~18頁)。「何もしなかった」理由としては、いずれのハラスメント行為においても「何をしても解決にならないと思ったから」がもっとも多い(順に65.6%、52.7%、56.1%)(本報告書18頁)。当該理由について令和2年度の調査結果をみると、いずれのハラスメント行為も「何をしても解決にならないと思ったから」がもっとも多い回答であるのは同様であるところ、その回答比率は順に67.7%、58.6%、57.4%であった(令和2年度報告書13頁、94頁~96頁)。

 一方の(A)企業調査について調査結果の概要をみると(本報告書7頁以下・8頁以下)、①過去3年間に各ハラスメントの相談があったと回答した企業の割合は、高い順にパワハラ(64.2%)、セクハラ(39.5%)、顧客等からの著しい迷惑行為(27.9%)などとなる(本報告書8頁)。この割合は令和2年度調査によると、順に48.2%、29.8%、19.5%であったところ(令和2年度報告書7頁)、令和5年度調査において該当件数の推移を問うと、(i)パワハラについて「件数は変わらない」とする回答が30.2%ともっとも多く、次いで「増減は分からない」が28.4%、「減少している」が21.8%(本報告書7頁8頁33頁)。また、(ii)セクハラについては「減少している」が31.4%、「増減は分からない」が30.3%、「件数は変わらない」が27.3%。(iii)顧客等からの著しい迷惑行為については「増減は分からない」が41.7%、「件数は変わらない」が23.6%、「増加している」が23.2%となっている(本報告書33頁)。

 ②企業におけるハラスメントの予防・解決のための取組みの有無をみると、(i)パワハラについて実施している企業は95.2%、(ii)セクハラについては92.7%、(iii)顧客等からの著しい迷惑行為については64.5%である(本報告書64頁66頁)。取組みの内容としては、いずれのハラスメントに関しても「相談窓口の設置と周知」がもっとも多く、(i)パワハラに対しては86.0%、(ii)セクハラは86.6%、(iii)顧客等からの著しい迷惑行為は76.1%において相談窓口に係る対応がなされていることになる(令和2年度報告書41頁によると、(i)パワハラについて78.6%、(ii)セクハラは80.6%であった)。企業の取組みとしては「ハラスメントの内容、職場におけるハラスメントをなくす旨の方針の明確化と周知・啓発(就業規則等への規定、社内広報誌等への記載・配布、従業員向け研修等)」の割合も高く、(i)パワハラについて82.6%、(ii)セクハラは82.9%、(iii)顧客等からの著しい迷惑行為は61.5%などとなる(本報告書68頁)。

 ③今後必要となるハラスメント予防・解決のための取組みについて「あてはまるものをすべて」尋ねる設問では、もっとも多い取組みとして「企業の自主的な取組の促進・支援」(54.7%)とする回答が寄せられた。次いで「ハラスメント(ハラスメントの行為者)に対する規制」(36.5%)、「国による社会全体や企業に対する啓発や教育」(33.6%)、「業界団体の取組の促進・支援」(21.0%)、「ハラスメントを行う行為者を雇用する企業に対する規制」(12.3%)となっている(本報告書8頁12頁100頁101頁)。

 なお、本報告書においては上述のように(B)労働者等調査の「特別サンプル調査」となる(a)女性の妊娠・出産・育児休業等ハラスメント、(b)男性の育児休業等ハラスメント、(c)就活等セクハラに関する各調査結果が収載されているほか(調査結果の概要として、本報告書14頁以下・21頁以下)、(A)企業調査の内容もこれら(a)ないし(c)の実態・対応を明らかにするものとなっており(同様に、本報告書7頁以下・8頁以下)、適宜参考とされたい。

 


厚労省、「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40277.html

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