SH5107 募集新株予約権の機動的な発行(ストックオプション・プール)に関する制度の創設 龍野滋幹/山本拓歩(2024/09/24)

組織法務経営・コーポレートガバナンス

募集新株予約権の機動的な発行
(ストックオプション・プール)に関する制度の創設

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 龍 野 滋 幹

弁護士 山 本 拓 歩

 

1 はじめに

 2024年9月2日、同年6月7月に公布された「新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律」の一部が施行され、産業競争力強化法(以下「本法」という。)が改正されるとともに、「産業競争力強化法に基づく募集新株予約権の機動的な発行に関する省令」(以下「本省令」という。)が新たに公布・施行された。これにより、会社法の特例として、スタートアップ企業を始めとする非公開会社において、所定の要件を満たすことを条件にストックオプション(募集新株予約権)の柔軟かつ機動的な発行を可能とするストックオプション・プールに関する制度(以下「本制度」という。)が創設された。

 特に資金力に乏しく十分な金銭報酬を提示することができないスタートアップ企業においては、ストックオプションは、優秀な人材を確保する手段として従前から重要な役割を果たしており、その重要性は高まっている。政府も税制適格ストックオプション制度の改正等を通じてスタートアップ企業の人材獲得力・維持力の向上を後押ししており、本制度もその施策の一つと位置付けられる。本制度の創設により、ストックオプションの活用が一層進むことが期待される。

 本稿では、従前の会社法の規定の下でのストックオプション発行の硬直性の問題を概観した後、本制度の概要を説明した上で、本制度創設後に残された課題についても触れる。

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(たつの・しげき)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2000年東京大学法学部卒業。2002年弁護士登録(第二東京弁護士会)、当事務所事務所入所。2007年米国ニューヨーク大学ロースクール卒業(LL.M.)、2008年ニューヨーク州弁護士登録、2007年~2008年フランス・パリのHerbert Smith法律事務所にて執務。2014年から東京大学大学院薬学系研究科・薬学部「ヒトを対象とする研究倫理審査委員会」審査委員。国内外のM&A、ジョイント・ベンチャー、投資案件やファンド組成・投資、AI・データ等の関連取引・規制アドバイスその他の企業法務全般を取扱っている。週刊東洋経済2020年11月7日号「「依頼したい弁護士」分野別25人」のM&A・会社法分野で特に活躍が目立つ2人のうち1人として選定。

 

(やまもと・たくほ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2017年東京大学法学部卒業。2020年東京大学法科大学院卒業。2022年弁護士登録(第二東京弁護士会)。主にM&A、コーポレート、ウェルスマネジメント及び保険の分野を扱うほか、ベンチャー・スタートアップ企業支援にも携わる。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。

<連絡先>
〒100-8136 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング

 


* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用

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