「すしざんまい」の商標の差止訴訟に対する知財高裁判決[1]
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士・弁理士 後 藤 未 来
弁護士 松 永 大 空
1 はじめに
日本の大手寿司チェーン「すしざんまい」を運営する株式会社喜代村(以下、「原告」という。)は、魚介類および水産加工品の輸出入ならびに販売を行うダイショージャパン株式会社(以下、「被告」という。)を被告として、商標権侵害に基づく差止めおよび損害賠償請求訴訟を提起した(東京地方裁判所令和3年(ワ)第11358号)。
具体的には、原告は、下記【表1】の標章による商標(商標1)および標準文字による「すしざんまい」(商標2)ならびに「SUSHI ZANMAI」(商標3)(以下、これらを「原告各商標」という。)を登録商標として有しているところ、被告が、被告の運営するウェブサイト(以下、「本ウェブサイト」という。)において、「Sushi Zanmai」という文字からなる表示(表示1)と下記【表2】の標章による表示(表示2)(以下、これらを「被告各表示」という。)を掲載した行為が原告各商標の商標権侵害に該当すると主張した。
【表1】[2]
【表2】[3]
結論として、原審(東京地裁)は、被告による商標権侵害を認定し、被告に対し、被告各表示の差止め、損害賠償の支払い等を命じた。これに対し、控訴審(知財高裁)は、商標権侵害を否定し、原告の請求を棄却する判決を下した(以下、「本判決」という。)。
以下では、原審(東京地裁)の判断とも対比しつつ、本判決の判断内容やその判断ポイントについて概観する。
2 商標権侵害の一般的要件
商標法(以下、法令名を省略する。)37条によると、指定商品・指定役務またはこれに類似する商品・役務について、登録商標またはこれに類似する商標を使用等する行為を商標権侵害とみなすとされている。また、商標の「使用」については、2条3号各号に列挙されている。
一般に、商標権侵害訴訟においては、①商標の類否、②商品または役務の類否、③商標権の使用の有無が主な争点となることが多く、本件でもこれらの点が争点となった[4]。
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(ごとう・みき)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー、弁護士・ニューヨーク州弁護士。理学・工学のバックグラウンドを有し、知的財産や各種テクノロジー(IT、データ、エレクトロニクス、ヘルスケア等)、ゲーム等のエンタテインメントに関わる案件を幅広く取り扱っている。ALB Asia Super 50 TMT Lawyers(2021、2022)、Chambers Global(IP分野)ほか選出多数。AIPPIトレードシークレット常設委員会副議長、日本ライセンス協会理事。
(まつなが・ひろたか)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2021年慶応義塾大学大学法学部卒業。2022年京都大学法科大学院退学。2023年弁護士登録(第一東京弁護士会)。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
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