米デラウェア連邦地方裁判所、判例要約をAI訓練に使用した行為の著作権侵害を認定
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士・カリフォルニア州弁護士 井 上 乾 介
弁護士 風 間 凜汰郎
ニューサウスウェールズ州弁護士・上海オフィス顧問 石 瀛
1 はじめに
2025年2月11日に、米デラウェア連邦地方裁判所は、AI開発企業ROSS Intelligence Inc.(以下「ROSS」という。)が、AIを利用したリサーチツールの訓練に当たって、法律情報プラットフォーム「Westlaw」を運営するThomson Reuters Enterprise Centre GMBHら(以下「TR」という。)の判例要約(Headnote)を複製し、TRの著作権を侵害したとするTRらによる主張を認容し、ROSSによる公正利用(Fair Use)の抗弁を退ける略式判決を下した(以下「本判決」という。)[1]。
本件における中心的な争点は以下の2点である。
① 著作権の有効性: TRが作成する判例要約に著作権が認められるか。
② 公正利用の適用範囲:AI訓練目的での著作物利用が「公正利用」に該当するか。
本稿では本件を概観し、主に上記②点目に関して考察の上、実務上の示唆を検討する。
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(いのうえ・けんすけ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 スペシャル・カウンセル。2004年一橋大学法学部卒業。2007年慶応義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年カリフォルニア大学バークレー校・ロースクール(LL.M.)修了。2017年カリフォルニア州弁護士登録。著作権法をはじめとする知的財産法、個人情報保護法をはじめとする各国データ保護法を専門とする。
(かざま・りんたろう)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2015年早稲田大学法学部卒業。2017年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2023年University of Southern California (LL.M., Certificate Media and Entertainment Law)修了。商標法・著作権法を中心に知的財産に関する案件を扱うほか、国内外の取引・電子商取引等に関するアドバイスを提供している。
(せき・いん)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2019年オーストラリアニューサウスウェールズ大学法学部卒業。2019年ニューサウスウェールズ州事務弁護士登録。2020年中国法律職業資格取得。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ハノイ、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国およびロンドン、ブリュッセルに拠点を有する。
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