東証、市場区分の見直しに向けた上場制度の整備
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業
弁護士 竹 岡 真太郎
1 はじめに
現在、東京証券取引所(以下「東証」という。)が運営する一般投資家向けの株式市場には、市場第一部、市場第二部、マザーズならびにJASDAQ(スタンダードおよびグロース)がある。これらの統合を含む市場構造改革の議論が進められてきたが、2020年12月、東証から「市場区分の見直しに向けた上場制度の整備について(第二次制度改正事項)」が公表され、パブリック・コメントによる意見募集の手続が実施された。また、かかる第二次制度改正事項の公表後に寄せられた質問を踏まえ、2021年2月には、新市場区分の上場制度や新市場区分への移行プロセスについて説明した「第二次制度改正事項に関するご説明資料」(以下「本説明資料」という。)が公表された。
2 本説明資料の概要
本説明資料にてカバーされている事項は多岐に渡るが、それらのうち注目される項目は以下のとおりである。
⑴ 流通株式の定義見直し
各市場への新規上場基準や上場維持基準においては、上場株式の流動性に関するものとして、流通株式数や流通株式時価総額等の基準が定められている。それらの基準においては、どのような株式が「流通株式」として認められるかが重要なポイントとなるが、流動性の向上により、株式の円滑な流通と公正な価格形成を確保する観点から、その定義の見直しが実施されることとなっている。
特に、現在の定義においては、上場株式数の10%未満であれば、実態として流通性が乏しいと考えられる株主の保有する株式も流通株式として取り扱われており、流通株式に関する基準が適切に機能していないとの懸念が指摘されていた。このため、①国内の普通銀行、保険会社および事業法人等の所有する株式については、上場株式数の10%未満を所有する場合であっても、流通株式から除く(ただし、直近の大量保有報告書等において、保有目的が「純投資」と記載されている株式については流通株式として取り扱う)とともに、②役員以外の特別利害関係者の所有する株式についても、流通株式から除く見直しが予定されている。具体的には、以下のような算式により流通株式数を算出するような見直しが予定されている。
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(たけおか しんたろう)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。2003年京都大学法学部卒業。2004年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。2011年米国Northwestern University(LLM)修了。2012年ニューヨーク州弁護士登録。国内外の資本市場における資金調達を中心とするキャピタル・マーケッツ分野で豊富な経験を有するとともに、クロスボーダーでの企業買収・提携案件や国際的な取引案件に幅広く携わる。
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