内閣府AI戦略会議における議論の動向
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 後 藤 未 来
弁護士 中 崎 尚
弁護士 中 野 健 登
1 はじめに
ChatGPTを始めとする生成系AIの急速な普及に伴い、内閣府は、その利用や規制について議論を行うため、関係省庁の実務者級のチームを編成した[1]。そこでは、AI戦略会議における議論等を踏まえ、様々な課題に対して関係省庁で連携して対応していくとしている。AI戦略会議の第一回会合[2]は2023年5月11日に開催され、第二回会合は同年5月26日に開催された。第二回会合では、第一回会合での議論等も踏まえ、「AIに関する暫定的な論点整理」(以下「AI論点整理」という。)が公表された[3]。本稿では、AI論点整理の内容等も踏まえ、AI戦略会議における議論の動向について概観する。
2 AIを巡る主な論点
第一回AI戦略会議では、AIを巡る主な論点として、①AIの利用、②AIの懸念・リスク、③AIの開発の3点が挙げられた。
⑴ AIの利用について
生成AIを含むAIの利用が、行政、企業、教育や医療機関等におけるデジタル化ならびにデジタル技術の活用を加速させ、我が国全体の生産性の向上、様々な社会課題の解決に資する可能性があるとされている。
もっとも、日本のAI研究開発は遅れているとの指摘もある。短期的には海外事業者のAPIを利用して十分な応用サービスを開発することも可能ではあるが、長期的には良質な日本語モデルを我が国で独自に開発することが極めて重要な課題であるとされている。
AIの利用に当たっては、各分野において、どのような点に留意し、どのように利用を進めるべきかについて個別的に検討することが求められる。
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(ごとう・みき)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー、弁護士・ニューヨーク州弁護士。理学・工学のバックグラウンドを有し、知的財産や各種テクノロジー(IT、データ、エレクトロニクス、ヘルスケア等)、ゲーム等のエンタテインメントに関わる案件を幅広く取り扱っている。ALB Asia Super 50 TMT Lawyers(2021、2022)、Chambers Global(IP分野)ほか選出多数。AIPPIトレードシークレット常設委員会副議長、日本ライセンス協会理事。
(なかざき・たかし)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所スペシャルカウンセル。東京大学法学部卒、2001年弁護士登録(54期)、2008年米国Columbia University School of Law (LL.M.)修了、2009年夏まで米国ワシントンD.C.のArnold & Porter法律事務所に勤務。復帰後は、インターネット・IT・システム関連を中心に、知的財産権法、クロスボーダー取引を幅広く取扱う。日本国際知的財産保護協会編集委員、経産省おもてなしプラットフォーム研究会委員、経産省AI社会実装アーキテクチャー検討会作業部会構成員、経産省IoTデータ流通促進研究会委員、経産省AI・データの利用に関する契約ガイドライン検討会委員、International Association of Privacy Professionals (IAPP) Co-Chairを歴任。2022年より内閣府メタバース官民連携会議委員。
(なかの・けんと)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2020年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2022年弁護士登録(第一東京弁護士会)。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。
<連絡先>
〒100-8136 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング
*「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用