東証、新型コロナウイルス感染症の影響に起因する場合の
上場維持・上場申請等で特例を新設
――有価証券上場規程・同施行規則を改正、即日4月21日から施行――
東京証券取引所は4月21日、「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた上場制度上の対応に係る有価証券上場規程等の一部改正」を発表し、同日、施行した。
改正案が3月31日に公表され、意見募集が4月14日まで行われていた。新型コロナウイルス感染症の拡大と長期化懸念が実体経済と株式市場の双方に大きなインパクトを与えているとし、上場会社および上場申請会社に対する現行の上場制度の適用について、実態に応じた柔軟な取扱いを可能とするために特例を新設するもの。改正案と今般発表された成案との相違は皆無である。
有価証券上場規程においては、次の6か条が新設された。1)722条(2020年新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた形式要件の特例)、2)723条(2020年新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた上場市場の変更審査の特例)、3)724条(2020年新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた指定替え基準の特例)、4)725条(2020年新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた本則市場の上場廃止基準の特例)、5)726条(2020年新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえたマザーズの上場廃止基準の特例)、6)727条(2020年新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえたJASDAQの上場廃止基準の特例)。
既上場の会社に対し、たとえば、上記4の新設によって債務超過に関する上場廃止基準を緩和する。通例「上場会社がその事業年度の末日に債務超過の状態である場合において、1年以内に債務超過の状態でなくならなかったとき」に上場廃止となるところ(有価証券上場規程601条1項5号)、「上場会社が事業年度の末日に債務超過の状態となったとき又は上場会社が直前事業年度の末日に債務超過の状態である場合において、1年以内に債務超過の状態でなくならなかったときであって、その理由が2020年新型コロナウイルス感染症の影響に起因するものであると当取引所が認めたとき」には「2年以内に債務超過の状態でなくならなかったとき」(725条)に上場廃止とする新設規定が適用されることになる。上記3により市場第一部銘柄の債務超過における指定替え基準も緩和され、通例「その事業年度の末日において債務超過の状態となった場合」に市場第二部銘柄への指定替えが行われるところ(311条1項5号)、新設規定では「その事業年度の末日に債務超過の状態である場合において、1年以内に債務超過の状態でなくならなかったとき」(724条)とした。
また、上記1の改正によっては、上場申請会社において新型コロナウイルス感染症の影響により直前事業年度の監査報告書に「限定付適正意見」が記載されている場合も基準を充足するものとする(一部指定、市場変更基準等についても同様の取扱い)。
新設された規定は改正が発表された4月21日、即日施行された。上記3の改正については「令和2年3月13日以後の日を事業年度の末日とするもの」から、上記4・5・6の改正については「令和2年3月13日以後の日を事業年度の末日又は上場廃止に係る猶予期間の最終日とするもの」から、それぞれ適用される。
なお、有価証券上場規程施行規則には、規程の改正に対応するように新設規定が置かれたほか、「2020年新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた上場審査料等の特例」として「新型コロナウイルス感染症の影響により新規上場に至らなかった場合であって、3年以内に再び新規上場申請を行うとき」は上場審査料を無料とする旨の規定が新設されている(703条の4)。