◇SH3129◇経営法友会、「緊急事態宣言下での総会対応についての意見」を公表 松原崇弘(2020/05/01)

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経営法友会、「緊急事態宣言下での総会対応についての意見」を公表

岩田合同法律事務所

弁護士 松 原 崇 弘

 

1 概説

 経営法友会は、2020年4月20日、「緊急事態宣言下での総会対応についての意見」を公表した。これは、6月に株主総会の開催を予定している株式会社において、各フェーズで考えられる新型コロナウイルス感染防止対策をどの程度実施するかについてのアンケート結果を公表するものである。

 3月期決算、6月に株主総会を予定している会社においては、まさに開催準備が進められているところであると思われる。各社のおかれた状況や環境を踏まえて検討すべき事項であるが、他社の動向は参考になるものと思われる。以下、アンケートの概要を説明する。

 

2 アンケートの概要

1 はじめに

 アンケート結果は、経済法友会の幹事・運営委員68社のうち29社からの回答をとりまとめたものである。アンケート結果は、4月17日現在とされているので、今後の日々の状況変化を踏まえて検討が必要であることを念頭におきつつ、自社の事情に照らして参考になる部分を検討すると有意に活用できるであろう。

 アンケートにおける各フェーズは、①事前準備に関する事項、②開催当日に関する事項、③事後のフォローで大別され、以下の表で整理できる。

  1. 1. 事前準備に関する事項
「1.事前準備の省略化」
「2.規模最小化、特殊対応に関する株主への事前告知」
「3.決算遅延し招集通知発送期限が3週とれず法定2週となった場合の対応」
  1. 2. 開催日当日に関する事項
「4.当日の入場制限、会場準備」
「5.当日の入場条件(株主・役員・スタッフ共通)」
「6.会場および付帯事項」
「7.出席役員・事務局準備」
「8.総会議事運営」
  1. 3. 事後に関する事項
「9.事後的フォロー」

 

 以下では、感染予防対応に直接関わる、②開催日当日に関する事項を紹介する。
 

2 「4.当日の入場制限、会場準備」に関して

 まず、(17)「事前登録または事前の人数上限告知による、入場制限」は、採用方針の割合が10%と低く、69%が不採用の方針とされている[1]

 次に、会場の選定に関しては、(18)隔離措置も可能な会場や(19)都道府県からの使用制限対象となった場合に備えての代替会場を用意は、必ずしも柔軟に対応できると限らないが、約40%程度で採用の方針とされている。

 会場の設営準備に関しては、(20)前後2M程度、左右も一定程度の間隔を空けて「着席できる座席数を上限」とすることは、59%が採用方針とされる。

 今後の状況次第ではあるが、来場者数抑制を目的とした感染防止対応として、感染が疑われる事情なしで入場制限を行うことには積極的ではなく、適切な離隔距離、隔離措置が講じることに重点が置かれている。

 

3 「5.当日の入場条件(株主・役員・スタッフ共通)」に関して

 (23)「マスク着用」は、93%と高い水準で採用方針とされる。これを入場条件とする場合、株主に関しては、マスクを着用しないで来場した場合も想定する必要がある。

 (24)入場時の「検温」、(25)サーモグラフィーカメラでの「検温」は、いずれも66%が採用方針とされる。(26)「37.5度以上は別室隔離、または、退場」は、86%が採用方針とされ、その判断には検温が必要となるので、感染防止対応にあたって、これらは一体で実施されることが多いと思われる。

 

4 「6.会場および付帯事項」に関して

 採用方針が9割を超えた対応は、(33)「2M間隔にはしないが、会場内で密にならないようできるだけ座席の間隔を空ける」、(37)「展示スペースや事業説明会、懇親会なし(終了後は速やかにお帰り頂く)」、(40)「マスク・消毒液の準備、配布、配置」、(42)「質疑用のマイクの消毒(発言後都度)」である。また、採用方針が7割を超えた対応は、(30)「受付周りの感染対策(ソーシャルディスタンス確保やパネル設置など)」、(34)「常時換気する」、(35)「お土産なし」、(38)「飲食提供なし」である。いずれも、接触の機会を減らすことを目的とした感染予防対応で、比較的採用しやすい対応である。

 

5 「7.出席役員・事務局準備」に関して

 関心が高いと思われる(48)「登壇役員数の削減」は、採用方針24%にとどまり、基本的に、マスク着用で「全員出席の予定、登壇者を減らす可能性はあるが極端な削減は株主への配慮も踏まえ消極的」とされた。(54)執行役員の陪席の削減は17%にとどまり、「株主への説明責任の観点から」「従来の運用を継続」を基本とされた。

 マスクの着用に関して、「発言時も」着用との回答もあったが、(55)「役員は発言時のみマスクを外し、発言者は2M間隔を保てるエリアで発言」は、66%が採用方針とされた。

 

6 「8.総会議事運営」に関して

 総会の開催時間の短縮が多くの会社で検討されている。(61)「総会時間の短縮(説明の簡素化、質問の時間・個数の制限)」は、93%が採用とされ、関連して(63)「冒頭に議長より感染予防対策のための時間短縮や予定終了時刻、特別対応、役員スタッフに兆候ないことを説明」は、86%が採用方針とされた。

 時間短縮の具体的な方策として、(65)「事業報告も最小限に、対処すべき課題やCOVID-19の影響など重要事項の説明に絞る(凝った映像や長いナレーションなし、5分~10分程度)」は、90%が採用方針とされた。(68)「質問時間の制限(例えば一人○分、□人程度など、予め議長が説明)」は、69%が採用方針とされた。

 

3 結び

 6月に株主総会の開催を予定する各社においては、会社法上の手続を遵守し、株主総会の決議の取消、無効リスクを適切に排除することを基本としつつも、秩序ある株主総会を運営すべき立場から、適切な感染予防対応を実施できるよう、4月7日の緊急事態宣言の発令後の状況・環境を踏まえつつ、以上のアンケート結果も有効に活用されたい。

以上

 


[1]   各質問事項に対する回答は、「概ね採用/前向き検討」、「今後検討」、「おそらく不採用/不採用」に区分されている。

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